「守護者やヴァリアー。他にも数多くの人間がアイツに惹かれてる。名前の放つ、眩しくて温かい光にみんな惹かれてるんだ。そしてそれは――お前もだろ?リボーン」
その言葉に肩が揺れた。
「隠さなくて良いよ。俺達“闇”に生きる人間が“光”に憧れるのは自然な事だ。――だから歌姫がアルコバレーノの主だからと言って、気持ちを押さえ込む必要は…ないと思う。リボーンも名前の事が好きなんだろ?」
「………オレは――」
「誰かのモノになってからじゃあ遅いぞ?」
綱吉はリボーンの全てを見透かしていた。これでは何時もと逆ではないか。リボーンはボルサリーノを目深に被り、顔を隠す。それを見た綱吉はクツリと笑みを洩らした。
「今抱えている問題が解決したら、正式に婚約を申し込むつもりだ」
「…気まずくなるぞ」
「それでも良いよ。名前が俺の事を“一人の男として”意識してくれるなら…。俺は今のままじゃ嫌だから。俺は――名前の特別になりたい」
机の上で手を組んだ綱吉が、真っ直ぐにリボーンを見つめて来る。
(ダメツナの癖に)
それを見たリボーンの口元に、笑みが浮かぶ。
「精々取られないように気をつけろよ。守護者にも――オレにも…な」
どうやら完全に感化されてしまったようだ。だが一度認めてしまえば悩む必要はない。後は自分の感情に正直になるだけだ。『己の主』だとか、そんな事はどうでも良い。
素直に名前が欲しい。
(オレを敵に回した事、後悔するなよ…)
リボーンは綱吉に背を向け、執務室を後にしようとした。けれど、それを綱吉に止められる。
「あ、まだ話は終わってないぞ。…実はもう一つ決めた事があるんだ」
振り返ったその先には真剣な表情の綱吉…。
そして彼の下した決断が、後に彼らの運命を大きく変えるものとなる。
「俺さ」
運命の歯車は――
「ボンゴレリングを壊そうと思うんだ」
既に回り始めていた。
そして、陰は動き出す。
「どうやら歌姫チャンとアルコバレーノが接触したみたいだね…」
机の上に置かれた名前の写真を愛おしそうに眺める白い青年。青年は手にしたマシュマロを口に含むと柔らかく微笑んだ。
「それじゃあ今度こそ、本気で歌姫チャンを手に入れるとしようか」
大空の決意
(――始めるよ。“ボンゴレ狩り”を…)
【第3部 / END】