「そう言えば、聞き忘れた事があるんだが…」
時刻は深夜0時過ぎ。バイパーさんとスカルさんもお帰りになり、そろそろお開きにしようと一同が立ち上がった時だ。
自室に戻ろうと入り口に向かった私をラル・ミルチさんが呼び止めた。
「何ですか?」
「名前、お前もう相手は決めてあるのか?」
「相手?」
はて?何のだろう?何か決めるような事があっただろうか。ラル・ミルチさんを振り返った私は不思議そうに頭を傾げる。
するとその会話を聞いていた沢田さんとリボーンさんが「ぁ、」小さく声を洩らした。
「ら、ラル。その話は別に今じゃなくても…。も、もう遅いんだしさι」
だけど様子が変だ。奥歯にモノが挟まったような、沢田さんにしては珍しく歯切れが悪い。
「あの、10代目?」
「一体なんの話してんだ?ツナ」
獄寺さんと山本さんも、訳が分からないと頭を傾げている。この、誰一人理解していない状況を瞬時に察知したラル・ミルチさんは「まさか」と沢田さんを睨み付けた。
「…沢田、コイツらに話していないのか?」
彼女の問い掛けに彼は「あ、はは…」と苦笑いを浮かべるだけだった。
◇ ◇ ◇
「こここ婚約!!!!守護者の方と私がですか!」
「嗚呼。守護者と歌姫が婚姻を結ぶ事はボンゴレの掟として定められている。…言って置くがお前達に拒否権はないぞ」
腕を組みながら瞳を閉じるラル・ミルチさんを私は唖然と見つめていた。開いた口が塞がらないとは、まさにこの事だ。
「……どうしてそんな事を黙っていたんだい?…沢田綱吉…」
「返答次第では、ただでは置きませんよ?」
雲雀さんと骸さんが愛用の武器を構えて沢田さんに詰め寄る。最恐の二人に挟まれた沢田さんは、たじたじ。「ああ〜」やら「その〜」を連呼して、瞳を泳がせていた。
「しかしどうやって決めるのだ?守護者と言っても6人も居るのだぞ?」
「そうですよ!婚約と言う事は将来名前さんと、けけ結婚するって事ですよね!?なら、誰か一人に絞らないと――」
「嗚呼。だからその相手は名前本人が決める」
笹川さんとランボ君の疑問に淡々と答えるラル・ミルチさん…。
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