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42.10代目 歌姫 ***


綱吉達の中心で穏やかに微笑む名前を風は優しい眼差しで見つめていた。



「でも良かったのか?名前に全てを話さなくて」



コロネロの問いにリボーンは「嗚呼」と頷く。



「今は良い。今は自分がどれだけ重要な存在なのか、それさえ理解してくれれば、それでな…」

「だが、悠長な事は言ってられないぞコラ。敵は既に動きつつあるんだ」



一同の脳裏に、一人の人物が浮かび上がった。





――“白蘭”。





あの男については分からない事ばかりだ。

ボンゴレ関係者ですら殆ど知る者のなかった歌姫の存在を、何故かあの男は知っていた。そして彼女の出現と同時に真っ先に狙って来たのだ。

自分達が数十年も前に抹消した歌姫の情報…。それを一体何処で手に入れたのか?そして、何処まで知っているのか?

考えたら切りが無い。



「兎に角、警戒するに越した事はないだろう。相手が何時動き出すか分からないからな…」



ラル・ミルチの言葉に全員が大きく頷いた。



「じゃあ話は終わりだね。…僕はそろそろヴァリアーに帰るよ」

「オレもカルカッサファミリーに戻らないとな」

「え!バイパーさんとスカルさんは、お帰りになるんですか!?」



それまで綱吉達と談話していた名前が二人の会話を耳にしたらしく、慌てて話に加わって来る。



「まーね。そろそろ帰らないとベルが煩いから」

「オレも部下を待たせて居るからな」

「そう、ですか」



シュンと寂しそうに俯く名前を目にしたバイパーとスカル…。二人はちらりと(見えない筈の)視線を合わせる。



「別にそんな顔しなくてもまた会えると思うけど…?僕はヴァリアーの人間なんだし、ベルやルッスーリアは君の事を気に入ってるからね。…二人とまた遊びに来るよ」

「お、オレも――」

「お前は無理だぞ」



スカルの声を遮るようにリボーンが口を開く。



「一応敵対組織の人間だからな。次に此処(ボンゴレ邸)へ足を踏み入れたら……速攻で撃つ」

「Σ撃つのかよ!!」



鋭い突っ込みを入れながらガックリと項垂れるスカルを見て、名前は「あっ」と声を上げた。



「あ、あのっ少し待って居て貰えますか!」



そう言って応接室を飛び出す名前…。

残された面々は互いに顔を見合わせ、不思議そうに首を傾げる。暫くすると息を乱した名前が部屋に飛び込んで来た。その手に持っていたのは、デジタルカメラ。



「…はあ、はあ……。あの!み、みんなで……写真…撮り、ませんか」



突然の申し出に、当然嫌な顔をする者(主に雲と霧)も居たが、名前にお願いされて「嫌だ」と断れる筈もなく――。



「はい、チーズ!!」



10代目 歌姫


(全員で撮った貴重な写真は、名前の部屋に飾られている…)


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