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41.封印されし 力 ***


「壊してしまえばいいのではないですか」

「壊してもしもの事があったらどうする気だ!」



『D・スペード(霧)』の軽はずみな発言に、激怒する『G(嵐)』。そんな二人の隣で『雨月(雨)』は難しい顔をしていた。



「しかし、このままにしておく訳にもいかないでござるよ」

「そうだな。もしこの匣の情報が流れ、それを嗅ぎ付けた敵の手に渡れば究極に大変な事になる」

「そうだものね」



『ナックル(晴)』の言葉に『ランポウ(雷)』も同意。そんな彼らの話を聞きながら一人壁に凭れていた『アラウディ(雲)』。彼は机の上に置かれた小さな匣を見つめた。



(世界を消滅させる巨大な力…か。全く厄介なモノを作ってくれたね)



『アラウディ(雲)』が呆れたように溜息を零したその瞬間だった。





「『ジョット』。私に任せて下さいませんか」





凛とした声が部屋中に響いた。全員の視線が一斉に入り口へと注がれる。
そこに立っていたのは、白いドレスを身に纏った、一人の女性――。



「何をする気だ、歌姫」



歌姫と呼ばれた女性は、部屋の中へ入ると匣の置かれた机の前でピタリと足を止めた。



「この匣を――“私の身体”に封印します」



彼女の言葉に慌てて立ち上がる『ジョット』。守護者達も彼の後に続く。



「バカな事を言うな!その匣には“破壊の力”が宿っているのだぞ!!……そんなモノを身体に取り込めば、お前の身体だってどうなるか――っ」

「だけど『雨月(雨)』や『ナックル(晴)』の言うように、このままにして置く訳にはいかないでしょう?だからと言って『D(霧)』の言うように壊してしまえば、どんな事が起こるか分からない」



歌姫はそっと手を伸ばし、匣を持ち上げると自分の胸に抱え込んだ。



「心配しないで。私には癒しの加護があるもの。きっとその力が私を守ってくれるから。だから『ジョット』この匣を私に封印させて下さい」



迷いのない瞳が『ジョット』を射抜く。歌姫から揺らぐ事のない、強い意志を感じた。その瞳を見れば……分かる。



「もう決めたのだな」

「ええ」



大きく頷く歌姫に『ジョット』は一瞬の沈黙の後「頼む」と呟いた。とてもとても小さな声で。



「だが、お前一人にその重荷を背負わせたりしない。俺達も同等の使命を背負おう。その匣がお前の身体に封印される限り、俺達が歌姫を守る」



『ジョット』の周りに6人の守護者が集まった。彼らも又、歌姫を見つめたまま大きく頷く。



「――例え、この身に代えてでも、必ずその封印を守ってみせる」



瞬間、皆の決意が炎となってボンゴレリングに灯された。純度の高い“死ぬ気の炎”。それらを目にした歌姫は、穏やかに微笑みを浮かべる。



「みんな、ありがとう」



封印されし 力


(こうして世界を滅ぼす禁忌の匣(はこ)は歌姫によって、その身体に封印されたのである)


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あきゅろす。
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