雲雀さんは自身の指に填めたボンゴレリングを見つめる。そしてリングに炎を点した。色は紫。
「…僕は長年匣の研究をしているけど、そんな話は聞いた事がない」
「当たり前だ。歌姫の封印する“大地の匣”は、ボンゴレ内でも“最大機密に指定”されている。知る人間は疎か、資料すら殆ど残っていない」
「……何故?」
「オレ達が全ての書類や記述を抹消したからだ」
ラル・ミルチさんが強い口調でそう言い切る。
雲雀さんは難しい顔をして彼女を見ていた。
「オレ達にその命を下したのが先代歌姫である――“名字千歳”だ」
え?おばあちゃん??
「おばあちゃん…祖母を知っているんですか?」
「知っているも何も、僕達を集めたのが、先代歌姫だったんだからね」
「!!」
口を挟んだバイパーさんの言葉に驚き、硬直する私。祖母が彼らを…アルコバレーノを集めた張本人?そんな、どうして!
「アイツは……千歳はずっと恐れていた。近い将来、封印を脅かす“大きな力”が現れると…。だからこの世に存在する歌姫の記述を抹消し、オレ達に『次期歌姫を守って欲しい』と頭を下げたんだ。代々受け継がれて来た封印を守る為に。そして――お前を守る為に」
ラル・ミルチさんの話を聞きながら、私は自分の胸に手を添えた。
「そうまでして守らなければならない大地の匣とは一体何なのですか」
此処にいる誰もが感じているであろう疑問を骸さんが口にする。それに答えたのは、風さんだ。
「大地の匣…それはあくまで別名で、本来の名を“禁忌の匣(はこ)”と言います。この世で最初に作られた最古の匣と言われ、現在の匣兵器の先駆けとなった物ではないかと言われている代物です。最初に作られた物と言うのは失敗作に終わる事が多いのですが、時に有り得ない偶然が起こる。その匣は力を宿してしまったのです。それも当時の技術では考えられない程のとても大きな力を…。その余りに巨大過ぎる力を恐れ、匣を作り出した科学者は当時、最も信頼していた人物に助けを求めた。それが初代ボンゴレ・T世(プリーモ)」
◇ ◇ ◇
科学者から相談を受けた初代ボンゴレ・T世『ジョット』は直ぐに己の守護者を集めた。
この匣をどうすべきか彼らの意見を聞く為だ。
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