ポタリ、ポタリ。大粒の涙が頬を伝う。沢田さんは困ったように眉根を寄せて、その涙を拭ってくれた。まるで「泣かないで」と言ってるみたい。
「そしてそれはリボーンだって同じの筈だ。そうだよな?…リボーン」
全てを見透かしたように沢田さんは語り掛ける。瞬間、リボーンさんの口元がふっと綻んだ。
「名前」
「……は、い…」
「合格だぞ」
「ぇ」
彼の返事と共に、目の前に座っていたアルコバレーノ全員が立ち上がる。
言われた言葉に自分の耳を疑った。私の聞き間違い?……ううん。確かにリボーンさんは『合格』――と仰った筈だ…。
「辛い思いをさせて悪かったな。…でもこれはツナ達の気持ちを確かめる大事な試練だったんだ」
「…し、れん?」
それも『私』のではなく『沢田さん達』の?
「嗚呼。ボンゴレリングの正当後継者であるツナや守護者全員が歌姫を認め、守る意志があるのか……オレ達にはそれを確かめる義務があった」
「どう、して…?」
「名前を――歌姫を“命に代えても”守る覚悟があるのか見極める為だ」
一瞬、何を言われたのか分からなかった。
『何に』代えても『誰』が『誰』を守る…?
頭の中が真っ白になる。『歌姫とは認めない』そう言われた時よりもショックな言葉だった。
ガタッ。私は勢いよく立ち上がる。握り締めた拳が――痛いっっ。
「沢田さん達の命に代えてもだ何て…っそんな、そんな大切なモノに代えてまで守って貰おうとは思っていません!!!!」
皆さんに迷惑を掛けないように、少しでもお役に立てるように…。その為に『歌姫の力』を使いこなせるように、『歌姫』として認めて貰えるようになりたかったのだ。
それなのに、その『歌姫』を守る為に彼らが命を賭けるだ何て――そんなの冗談じゃない!!
珍しく声を荒立てる私に、ボルサリーノのツバから漆黒の瞳を覗かせたリボーンさんが一言…。
「ダメだ」
「どうしてです!!!」
間髪入れずの彼の返答に、私の声は更に大きくなる。何時しかその声は悲鳴へと変わっていた。
止まった筈の涙が再び溢れ出す。その瞬間だ。
「――っ…」
ぐいっと腕を引き寄せられ、全身が温もりに包まれる。驚き、瞳を見開く私を抱き締めたのは、
「……泣くな…」
リボーンさんだった。
「分かってくれ…。お前を――お前の中に封印された力を守る為なんだ」
私の中に封印された力?
「その封印を守る為に、オレ達は存在する…」
それは一体……
「歌姫の身体に封印された“破壊の力”。それを守る為にオレ達アルコバレーノやボンゴレファミリーが存在するんだ」
――何?
歌姫を守る者
(歌姫を守る為ならこの命、惜しくはない…)
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