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40.歌姫を守る者


「オレ達アルコバレーノはそんな半人前の人間を『歌姫』とは認めない」



ラル・ミルチさんの言葉が、何度も何度も頭の中でリピートする。その度に胸が痛い。痛いよ。



(――だけど、確かに彼女の言う通りだ…)



先代歌姫の孫と言うだけで、私に歌姫を継ぐ素質があるとは思えない。正面に力も使えないのだ。そんな人間を誰が認める?誰も認める筈が―…





「勝手な事言ってんじゃねーっっ!!!」





その声に私はハッとした。怒鳴り声を上げたのは沢田さんの後ろに立って居た獄寺さんだった。
彼はギリッと歯を食いしばり、ラル・ミルチさんを睨み付ける。



「半人前だからコイツを歌姫とは認めねー…だと?ふざけんなっ!!勝手な事ばかり言いやがって!!てめーらに名前の何が分かんだよ!コイツが今までどんな気持ちで頑張って来たか……てめーらに分かんのかああっっ」

「獄寺」

「………ちっ…」



今にも掴み掛かりそうな獄寺さんをやんわりと止めたのは山本さんだ。
けれど、その態度とは裏腹に彼もまた、厳しい顔付きでラル・ミルチさんを見つめていた。



「でも俺もお前と同じ意見だぜ、獄寺。名前がどんなに頑張って来たかは、傍に居た俺達が一番良く知ってんだ。……なのに突然現れて、いきなり認めねーってのはちっと可笑しんじゃねーか?」



応接室が不穏な空気に包まれる。そんな中、一人無言で立ち上がったのは……雲雀さんだ。彼はそのまま扉の方に歩いて行くと、迷う事なく、右手をドアノブに掛けた。



「何処へ行くんだ」



それを咎めたのはリボーンさんだ。雲雀さんは振り返る事なく、リボーンさんの問いに答える。



「…決まってるよ。自分の部屋に戻るんだ」

「話は終わってねーぞ」

「終わったも同然だよ」



地を這うような低い声。ゆっくりとこちらを振り向いた雲雀さんは全身から殺気を漂わせていた。それを目にしたバイパーさんは息を飲み、スカルさんは肩を揺らす。



「彼女を歌姫と認めないと言う事は、違う人間がその地位に就く…そう言う事だろう?赤ん坊」

「……嗚呼…」


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