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39.閉ざされた 道 ***


その表情は、何処か嬉しそうに見えた。でも、



「お前に一つ訊きたい。これまで自分の意志で歌姫の力を発動させる事が出来なかったというのは本当か?……おまけに本来歌姫が持つべき力も扱えず、その力を暴走させていたと言うのは?」

「っっ」



私はヒュッと息を飲む。そして一瞬の躊躇いの後、小さく頷いた。

『祖母から受け継いだ歌姫の力』。それが自分にあると分かったあの日から、私は毎日特訓を繰り返して来た。その力を使って今まで散々迷惑を掛けて来た、沢田さんや守護者の皆さん・ファミリーの方々のお役に立てないかと考えたからだ。

でもどんなに練習を繰り返しても、その力を発動させる事は出来なかった。本当に私に力があるのかな…。疑問は今でも胸の中に渦巻いている。周りに『歌姫』として認められれば認められる程、私の感じる不安も次第に大きくなって行った。



「………そうか…」



ラル・ミルチさんの落胆した声が耳に届く。私は俯き、膝の上に置いた自分の手を握り締めた。





「――なら、お前を認める訳にはいかない…」





身体が、硬直する。





「オレ達アルコバレーノはそんな半人前の人間を『歌姫』とは認めない」





『歌姫とは認めない』彼女に告げられたその一言が、胸の奥へと深く、深く……突き刺さった。





閉ざされた 道


(『半人前』・『役立たず』・『足手纏い』それは常日頃、私自身が感じていた不安の名前…)


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あきゅろす。
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