「それは名前が真の歌姫なのか見極める為だ」
コロネロさんの代わりに口を開いたのは……この中で唯一の女性。ラル・ミルチさんだった。
「私を…見極める?」
「…何故、アルコバレーノがそんな事をする必要があるんです?」
私の疑問を代弁するかのように骸さんが6人に訊ねた。そして疑問に答えたのは――風さんだ。
けれど彼の発した“言葉”によって、私の頭は更に混乱する事になる。
「それは歌姫が――我々アルコバレーノの“主君”になるからです」
「しゅ、く…ん?」
暫しの沈黙の後、私は小さく呟く。それは余りに言い慣れなくて、聞き慣れない言葉だった。
「冗談、ですよね?」
だってそうとしか考えられない。私は苦笑を浮かべて目の前の6人を見つめた。でも誰一人として冗談を言っているようには見えない。…つまり、
「本当の事ですよ」
風さんの穏やかな瞳がしっかりと私を捕らえる。その瞳から目が逸らせない。心臓の音が煩い。
「歌姫が我々アルコバレーノの主になるのです」
「…っっ………で、もリボーンさんは今までそんな事一度だってっ。…それに私が此処に来たばかりの時、歌姫の事は知らないって――!!」
「知らなかったんじゃねぇ。言えなかったんだ」
『知らなかった』ではなく『言えなかった』??
「――それ、どう言う…意味…なんですか?」
自分の耳を疑うような話の連続に、声が震え始める。もう頭が混乱して可笑しくなりそうだ。
(でも、ちゃんと最後まで聞かなきゃ…)
これまで歌姫については、祖母が先代を勤めていた…と言う事しか詳しい事は分からなかった。何せ歌姫に関する資料が全くと言って良い程、残っていなかったからだ。
唯一事情を知っているであろう9代目に訊ねても「時が来るまでは」と言って、それ以上の事を話してはくれなかった。もし9代目の仰った『時が来るまで』が今なら?
この機会を逃す訳にはいかない。知らない事があってはいけないんだ。だって自分で歌姫を継承すると決めたのだから。
「興味本意で訊いている…訳ではなさそうだな」
ラル・ミルチさんが私の目を見ながらそう囁く。
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