黒いフードを脱いだ所為で、更に顔がはっきりと見える。こうして見ると本当に雲雀さんと瓜二つだ。まるで双子みたい。
「今、貴女が仰った『倒れろ』と言う力は、本来貴女(歌姫)が持つべき能力ではありません。それは恐らく…能力のコントロールが不十分の為に起きた“力の暴走”です」
「力の暴走??」
「ええ。ごく小さな…ですが。現に今、貴女は、その『倒れろ』とは異なる力を使ったではありませんか。仲間の傷を癒し、守る力。それが本来“歌姫が司る能力”」
勿論、攻撃に近い能力も持っていますがねと、雲雀さんのそっくりさんは最後にそう付け加えた。
彼の話が終わると辺りに沈黙が流れる。誰もが黙り込む中で、最初に口を開いたのは私だった。
「どうして貴方がそんな事を知っているんですか?沢田さん達だって知らなかった歌姫の事を」
「私の言っている事は信じられませんか?」
「信じられる訳ないじゃないですかっ!!!」
そう。信じられる訳がない。沢田さんを傷付けた貴方達の事なんて…。
私は今だに黒フードを被った、もう一人の人物をキッと睨み付けた。それに気付いた雲雀さんのそっくりさんが「やれやれ」と小さく溜息を零す。
「どうやら名前に嫌われたようですね。自業自得とは言え、お気の毒に」
「なっ、風!!お前、何自分だけ関係ない振りしてやがるんだコラ!」
私はパチクリと瞬きを繰り返す。………んん?『コラ』?何だか聞き覚えのある口癖だな。えぇ〜と何処で聞いたんだっけ?確かあれは――。
「そんなに怒るなよ、名字名前。あれでも手加減してやったんだからな」
バサッと黒フードを脱ぎ捨て、現れた人物を見て私は大声を上げる。
「ぁああああー!!!!」
風に揺れるブロンド。特徴的な迷彩服。忘れる筈がない。バルコニーで会った、あの男性だ!!
「何だ。やっぱりコロネロだったんだ」
驚く私の隣で、沢田さんが男性の名前を呟く。
「沢田さん、この方の事ご存じ何ですか!?」
「ん?嗚呼。コロネロだけじゃなくて風の事も知ってる。あ、風は雲雀さんに似てる人の名前ね」
いやいや。そんな淡々と説明されても…。と言うかお知り合いなのにどうして攻撃されたんですか!それに疑問は他にもある。沢田さん、今…。
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