私を抱き締めたまま穏やかに微笑む雲雀さん………のそっくりさん。
え?え?何がどうなってるの!…って言うか、この方ドナタですかー!!
「ふふ。雲雀恭弥を知っている方は皆さん同じ反応をされますね。そんなに似ているでしょうか」
どうやら本当に別人のようです。それもそうか。雲雀さんは敬語でしゃべらないし、それに…この人の方が優しそう(※本人不在の為強気)です。
「貴方は、一体――」
誰なんですか?――そう問い正そうとした瞬間、「…全く…」と呟く沢田さんの声が聞こえて来て、私はハッとする。
そうだ沢田さん!?私は雲雀さんのそっくりさんから身体を離すと、慌てて彼の元に駆け寄った。まだ少し身体がふらつくけど、今はそんな事を気にしてる場合じゃない。
「沢田さん大丈夫ですか!お怪我は…っっ」
「嗚呼。平気だ。多分名前のお陰だと思う」
「へ?」
一瞬、言われた意味が分からなくて、私はコテリと首を傾げる。それから暫くして、ふとある違和感に気付いた。
「…傷が――ない」
あんなに激しく木に叩きつけられたのに、傷は疎か身に着けている着衣にすら一切の乱れも見受けられなかった。しかも驚くのはそれだけではない。先程の戦闘で無惨な状態になっていた庭の草花や木々までもが元の状態に再生していたのだ。
「こ、これって…」
「だから言っただろ?多分名前の…歌姫の力だ」
「ええ!!歌姫の!?」
その問いに、彼は大きく頷く。自分の意志で初めて力を使う事が出来た。その嬉しさから私の顔には自然と笑みが浮かぶ。
でも、そうすると新たな疑問が浮上する訳で…。
「で、でも私、沢田さんを守る為に『倒れろ、倒れろ』って怨念を込めながら歌ったんです!それなのにどうして沢田さんの傷が治るんですか」
「………お前、綺麗な歌、歌いながら何て恐ろしい事考えてるんだι」
若干ひきつり笑いを浮かべる沢田さん。でも私嘘は言ってないです!全部本当の事ですから!!
「その疑問には私がお答えしましょう…」
声のした方を振り返ると、そこには赤いチャイナ服を着た、おさげ髪の雲雀さん………のそっくりさんが立っていた。
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