急に足を止めた私を沢田さんが振り返る。私は「何でもありません」と首を振って、再び沢田さんの元へと駆け寄った。
あ、そうだ!沢田さんに訊けば何か分かるかも知れない。パーティーの参加者なら沢田さんが招待して居る筈だもの!!
「あの沢田さん。少しお訊きしたい事があるんですけど宜しいですか?」
「ん?何?」
「実はさっきバルコニーでお見かけした……」
――と、話を続けようとした時だった。強い風が吹いて雲が月を隠す。
辺りは一瞬で闇が広がり、黒が私達を包み込んだ。それと同時に隣を歩いていた沢田さんがピタリと動きを止める。
「沢田、さん?」
「………」
前方をじっと睨み付けたまま、微動だにしない沢田さんを訝しく思い、私も彼の視線を追う。
「……名前…」
「はい?」
「――下がってろ」
そんな私の前に腕を出し、後ろへ下がるように促す沢田さん。尋常ではない彼の様子に、私も戸惑いながら素直に従う。
沢田さんの後ろに隠れ、息を殺して闇を見つめる。……一体、あの闇の向こうに、何が…。
そう思った次の瞬間だった。雲が流れ、月が再び姿を現す。同時に辺りを明るく照らし、私達の目に飛び込んで来たモノ。
それは――。
「……見つけたぞ、ボンゴレ10代目…」
黒いフードを被った、怪しい二人の人物だった。
狙われた 二人
(月明かりに浮かぶ二つの陰…。狙いは俺か?それとも名前か?)
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