[携帯モード] [URL送信]
32.広がる 大空 ****


「今回は君達の“勝ち”…。だから僕は素直に負けを認めるよ」



そのまま来た道を戻ろうとする白蘭さんを私は咄嗟に呼び止めた。だって分からない事ばかりだ!



「待って下さい!勝ちとか負けって…一体どう言う意味何ですかっっ」

「ん?…嗚呼、そうか。歌姫チャンは知らないんだったね。……これはね、僕と君達のボスが賭た“ゲーム”だったんだ」

「ゲー…ム?」

「そう。元は此処に居るファルちゃんに手を貸すだけだったんだけど、僕にも欲しいモノがあってね。…それでミルフィオーレで研究してる“記憶を無くす薬”を雲雀チャンに飲ませて、彼の記憶が戻れば綱吉クンの勝ち。戻らなければ僕の勝ち。そんなゲームをしていたんだ。…因みにその賭の対象は――君だったんだけどね、歌姫チャン」



歌姫が賭の対象?どうして、そんな…。余りのショックに声も出せない。そんな私を見て白蘭さんは優しく微笑む。



「僕はね、どうしても君が欲しいんだ。正確には君の中に眠ってる力がね。…だから歌姫チャン。僕は必ずボンゴレから君を奪ってみせるよ」

「!!!」



――あ……れ?…どうしたんだろう。白蘭さんと目が合った瞬間、身体が…動かなくなった。慌てて目を逸らそうとするのに、思い通りにならない。まるで、自分の身体じゃあないみたいだ。

どんどん彼の瞳に吸い込まれて――…、



「僕の元においで――歌姫…否、名前チャン」



支配される!そう思った。……けれど、



「そこまでだよ」

「……ぁ…」



突然、視界を覆われて、ハッと我に返る。それから徐々に身体の自由が戻って来て…。私は両目を塞いでくれた大きな手に自分の手を添えた。



「…雲雀…さ、ん」

「やれやれ…」



良い所だったのになぁ…。白蘭さんが残念そうに囁くのが聞こえた次の瞬間、背後に居た雲雀さんの雰囲気が変わる。ピリピリと痺れるような鋭い殺気を全身から感じた。



「さっさとその子を連れて帰りなよ…。それから次に会ったら――必ず君を咬み殺すから…」

「楽しみにしてるよ」



コツリ、コツリ…。徐々に足音が遠ざかって行く。…あ、待って!まだ彼に聞きたい事が…っ



「沢田さんは!?沢田さんは無事なんですかっ」


[←][→]

あきゅろす。
無料HPエムペ!