背後から聞こえた第三者の声。この声はまさか!私は後ろを振り返る。
「答えられなくて当然よね、ボンゴレの歌姫」
そこに居たのは今回の全ての“元凶”
「貴女は恭弥を――殺しに来たんですもの」
ベスティオーラファミリーのボス、ファルファッラさんだった…。
◇ ◇ ◇
「…僕を…殺しに?」
突然、私達の前に現れたファルファッラさん。彼女は確かに、そう口にした。雲雀さんの瞳がすっ、と細められる。
私は咄嗟に否定しようとした。でも…、
「 」
声が出なくて…。結局、口を噤んでしまう。
「否定しないと言う事は、それが事実だから」
ゴロゴロ――…遠くで雷の音が鳴り響く。
私の横を通り過ぎ、雲雀さんの前に立ち塞がるファルファッラさん。私と目が合った瞬間、彼女は微かに…微笑んだ。
(この人、私が声が出ない事を知ってるんだ)
先程の微笑みがその証拠…。私はぐっと唇を噛み締めた。どうしよう。このままじゃあ、ファルファッラさんの思う壺だ。
「恭弥、この女はね、貴方の記憶を奪い」
(――違う…っ)
「今度は、その命まで奪おうとしているのっ」
(――違いますっ!!!)
私は必死に頭を振った。これじゃあ本当に彼女の思い通りになってしまう。何とかしないと、何とかしないとっ、ナントカ…シナイト――…。
私は胸の前で手を組み、そっと瞳を閉じた。
(――お願い…。今だけで…良いの…)
「恭弥は渡さないわ」
(――もう一生…歌えないままでも良いから)
「彼は……必ず私が守ってみせるっっ」
(雲雀さんに、私の声が――届きますように)
私は瞳を開け、雲雀さんに向かって手を伸ばす。
「思い出して下さい!!雲雀さあああああんっっ」
私が叫んだ瞬間、ファルファッラさんは太股に忍ばせていた拳銃を取り出し、引き金を引いた。
パァーン!!
静かな公園に不釣り合いな銃声の音が響き渡る。私は確かに撃たれた
“筈”だった。
けれど私が感じたのは焼けるような痛みではなく、身体を包み込む心地良い……温もり。
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