[携帯モード] [URL送信]
32.広がる 大空


今にも雨が降り出しそうな曇り空の下を私は骸さんから聞いた目的地目指して、ひたすら走り続ける。こうして一人で街に出るのはイタリア(此処)に来た時以来だ。

半分ドキドキして、もう半分…心細く感じる。



(獄寺さん、心配してるかな。黙って屋敷を抜け出したりして…)



だけど骸さんに一人で行くように言われたし、それに、これ以上…私の事で獄寺さんを煩わせる訳にはいかなかった。



(ごめんなさい、獄寺さん。無事にお屋敷に戻れたら、お説教でも何でも聞きますから…っっ)



兎に角、今は骸さんに言われた場所に急がないと。そこに行けば、雲雀さんに会えるんだから!




◇ ◇ ◇


町外れの小さな公園。そこに私の探している人は居た。漆黒の髪を靡かせ、黒い空を静かに見上げる見知った後ろ姿。間違いない…雲雀さんだ。



「……、…」



けれど、その後ろ姿は凄く寂しげで、見ているだけで胸の辺りがきゅっと苦しくなる。私は乱れた呼吸を整えながら、ゆっくりと近付いた。



「………誰?」



気配を消す…と言う高度な技が私に使える筈もなく、あっさりと雲雀さんに気付かれてしまう。流石に彼が振り向いた時には足が竦んだ。手にはトンファーが握られ、全身から凄まじい殺気が漂っていたから――…。



「……っ…」



『攻撃されるっ』…そう思った私は、ビクリと身体を硬直させた。あの時の恐怖が…再び蘇る。

しかし、雲雀さんは攻撃して来なかった。それ所か驚いたように私を見つめるだけで…。

どうしたのだろうかと、私も彼を見つめ返す。



「「………」」



互いに見つめ合ったまま、暫しの時間が過ぎ、先に口を開いたのは。



「…どうして――君が此処に居るんだい?」



以外にも雲雀さんの方だった。私は返事をしようとして、口を閉ざす。



「……どうしたの?早く答えなよ…」

(――そうだ。私……今、しゃべれないんだ)



獄寺さんやランボ君のように、口の動きを読み取って貰うと言うのは無理だろう、今の雲雀さんでは…。それならどうやって伝えよう。何か良い方法はないだろうか…そう考えを巡らせた瞬間だ。



「…無駄よ、恭弥…」


[→]

第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!