「…何でアホ牛がそこに居んだよ。てめーはさっさと自分の任務に――」
『そ、そんな事より大変なんです!!!!名前さんが、名前さんが何処にも居ないんですよ!』
ランボの取り乱した声は、受話器越しにビアンキの耳にも届く。
「落ち着きなさい、ランボ。名前が居ないって…本当なの?」
『は、はい!名前さんをお茶に誘おうと思って医務室に行ったんです。この時間は何時も山本氏達の所に居ますから…。なのにオレが行った時には誰も居なくて。変だなと思って屋敷中を探したんですけど、何処にも居なかったんですっ』
「屋敷中を探しても居ないって…、っ…まさか、あの子、外へ――」
嫌な予感が脳裏を過ぎる。それと同時に獄寺が部屋を飛び出そうとして。
「待ちなさい、隼人!何処へ行く気っ」
「……アイツを探しに行く。一人で外に出ればヤベェ事位、姉貴だって分かってんだろ…」
「だからって何処へ行ったかも分からないのに、どうやって探す気!少しは落ち着きなさ――」
「落ち着いてられっかよっっっ!!!!!!」
ビアンキの静止も聞かずに獄寺は扉を開けた。……否、正確には開けようとしたのだ。けれど、彼が開けるよりも先に扉が開いて――。
「名前が心配なのは分かるけど、君をこのまま行かせる訳にはいかない」
目の前に表れた人物を見て、身体がピクリとも動かなくなる。それは背後に居たビアンキも同様。
「…な、…んで…」
獄寺は自分の目を疑った。これは骸の見せる幻覚だろうか?それとも幻…?だって、そんな筈がない!本人な訳がない。
“あの方”が此処に居る筈が――ないのだ…。
「悪いけど俺の指示には従って貰うよ、獄寺君」
消息不明の“沢田綱吉”が此処に居る筈がない。
晴れ 時々 晴れ
(でも目の前にいらっしゃるのは間違いなく……“10代目”だ)
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