私が声を出せなくなってから五日が経った。
ボスである沢田さんが不在の今、ボンゴレを纏める事が出来るのは右腕である獄寺さんだけだ。
部下の方に指示を出したり、上がってきた書類に目を通してたりと何時も以上に忙しい日々を送って居る獄寺さん。そんな彼の為に私も何か出来ればいいのだけど…。
――私に出来る事はこの位しかないんですよね。
私は机の端にそっとコーヒーカップを置く。
「名前?」と振り返った獄寺さんに、微笑み向け『少し休憩にしませんか?』と口元を動かす。それを読み取った獄寺さんは掛けていた眼鏡を外して軽く肩を回した。
――獄寺さん、目が充血してる。やっぱり疲れてるんだろうな。
普段なら沢田さんが行う作業も今は全て獄寺さんに回って来る。ボスが居ないのだから仕方ないけれど、このままじゃ獄寺さんが倒れてしまう。
――沢田さん…今、何処に居るんですか?
私は安否すら分からないボスを想いながら、胸に抱えていた居たトレイをぎゅっと抱き締めた。
「…心配すんな…」
――え?
「…10代目なら大丈夫だ。あの方がそう易々とヤられるかよ。ボンゴレの…俺達のボス何だぜ」
――どうして?…私、口に出してないのに…。
獄寺さんは読心術を使えない筈。なのにどうして私の考えていた事が分かるの?不思議そうに目を見開く私を見て獄寺さんは、ふっと瞳を伏せた。
「分かるに決まってんだろ。お前、全部顔に出てんだよ…」
獄寺さんは椅子から立ち上がると私の方へと歩み寄って来る。そしてゆっくりと手を伸ばし…、
「だからそんな顔すな」
壊れ物に触るように私の頬に触れた。真剣な眼差しで見つめられて胸が高鳴る。どうしたんだろう。何時もの獄寺さんじゃないみたい。彼の温もりが伝わって来て、触れられた頬が……熱い。
「…お前は――バカみたいに笑ってろ」
胸がドキドキする。音が……止まない。
コンコン、ガチャ。
「隼人、ちょっといいかし――……あら。お邪魔だったみたいね」
「なっ、姉貴っ///」
「!!///」
突然部屋に入って来たビアンキさんの声でハッと我に返った。私と獄寺さんは、あわあわと慌てながら咄嗟に距離を取る。
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