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26.雨が降る *****


名前はひゅっと息を飲む。ずっと聞きたかった声…。ずっと見たかった表情…。ずっと、ずっと、


“会いたかった人”


なのに…。





「君が―…歌姫だね」





何時もと様子が違う。漆黒の髪も、切れ長の瞳も、見間違える筈がないのに…まるで別人のよう。

その人は彼女の事を『歌姫』と呼ばない。その人は彼女にこんな冷たい視線を向けたりしない。


その人は―……







「…君に個人的な恨みないけど彼女の為なんだ……消えて貰うよ」







彼女に“トンファー”を向けたりしない。


じゃあ、貴方は―…



雨が降る


(…一体……誰?)


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