名前はひゅっと息を飲む。ずっと聞きたかった声…。ずっと見たかった表情…。ずっと、ずっと、
“会いたかった人”
なのに…。
「君が―…歌姫だね」
何時もと様子が違う。漆黒の髪も、切れ長の瞳も、見間違える筈がないのに…まるで別人のよう。
その人は彼女の事を『歌姫』と呼ばない。その人は彼女にこんな冷たい視線を向けたりしない。
その人は―……
「…君に個人的な恨みないけど彼女の為なんだ……消えて貰うよ」
彼女に“トンファー”を向けたりしない。
じゃあ、貴方は―…
雨が降る
(…一体……誰?)
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