26.雨が降る **
一瞬、自分の耳を疑ったけれど「早く帰り仕度するのよぉー」と言うルッスーリアの言葉に幻聴では無い…と立ち上がる。
迎えに来てくれたと言う事はボンゴレの空気を悪くしていた“何か”が解決したと言う事だろうか?慌てて帰り仕度を始める名前の表情には微かに笑顔が戻って居た。
◇ ◇ ◇
名前を迎えに来たのは獄寺だった。車のドアに凭れて自分を待つ彼の元へ名前は走り寄る。
「獄寺さ、」
名前を呼ぼうとして、足が止まった。それは獄寺の表情を見れば直ぐに分かった事だから…。
嗚呼、まだ何も解決していないのだと…。
そんな彼女の姿に気付き、無言で助手席のドアを開ける獄寺。名前も何も言わずに黙って車へと乗り込んだ。
◇ ◇ ◇
「名前ちゃん」
二人の様子を静かに見守っていたルッスーリアは申し訳ない気持ちで一杯になる。当然、ヴァリアー側にも綱吉達が消息不明という報告は入って来ていた。けれど自分達には何も出来ないのだ。
ボンゴレのボス、沢田綱吉から依頼が無い限りは…。そしてその綱吉が不在の今、ヴァリアーを動かす事が出来るのは唯、一人しかいない。
「…ボスの説得は、スクとベルちゃんに掛かってるんだからね」
ルッスーリアは祈る想いで空を見上げた。今にも泣き出してしまいそうな、真っ黒い大空を…。
◇ ◇ ◇
「「………」」
帰りの車内。互いに一言も話さないまま、エンジン音だけが響き渡る。
けれどその沈黙を破ったのは――…、
「沢田さん達に…何が、あったんですか」
名前だった。確信を突いたその問いに獄寺は動揺した。ハンドルを持つ手に力が籠もる。彼女はその小さな反応を見逃さず微かに微笑んだ。
「獄寺さん達優しいから、私に心配を掛けさせないようにして下さったんですよね。だから私をスクアーロさん達の所に行かせた。それが分かったから私も気付かない振りをしていたんです」
赤信号で車が止まる。名前は静かに獄寺の横顔を見つめた。
「だけど、獄寺さんのそんな辛そうな顔を見て、知らない振りは、もう出来ないから…」
「お、前」
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