この時やっと骸さんの顔に笑顔が戻った。うん。今、目の前に居るのが私の知ってる骸さんだ。
「…でも“裏切る”とかは、もう無しにして下さいね。例え演技でも…やっぱり哀しいから…」
大切な人が、大切な人達を裏切る光景。それは大きな傷となって私の中に刻み込まれた。芝居だと分かった今でも思い出すだけで……胸が痛む。
微かに顔を歪める私に骸さんがそっと囁いた。
「確かにあれは芝居でしたが『彼らの事を仲間だと思った事は一度もない』と言う言葉に……偽りは無いんですよ」
「っ!!!!」
「僕は裏切ろうと思えば何時でも裏切れるんです…ボンゴレ(彼ら)を」
目の前が真っ黒になる。
「――そ……んな…っ…どうしてそんな事!」
「…ですが、どうして実行しないか……君に分かりますか?」
ギシリ…。ベッドが二人分の体重を支えて軋む。気が付くと、骸さんがベッドに乗り上げて私に覆い被さって居た。
「君が居たから――」
「む、くろさ…」
「名前が居たから……裏切れなかった」
骸さんの顔が徐々に近付いて来る。こんな真剣な顔、見た事がない。
ドキドキ。心臓の音が煩い。身体が…動かない。
「……名前…、…僕は、君の事が――…」
「……っっ」
あと数センチで唇が重なる…そんな瞬間だった。
バァァァンと言う、けたたましい音と同時に部屋のドアが開いて中に入って来たのはボンゴレ10代目、沢田綱吉さんだった。それに続いてリボーンさん、獄寺さん、山本さんも入って来て―…。
全『…骸…』
皆さん、完全に目がイッちゃってましたι
「どどどうしたんですか!骸さんが何か…ι」
全『名前は黙ってろ』
「は、はひっ」
怖い怖い怖いよォ〜ι私は皆さんの剣幕に負けてビクビク震えながらベッドの上で縮こまる。
「どういう事だ、骸」
「沢田綱吉、女性の部屋に入る時にはノックをしないと失礼ですよ」
「…惚けるな。突き飛ばした事を一番に謝りたいから名前の付き添いは自分にさせて欲しい…て言ってたよな?」
「て、てめ〜〜〜、謝る所かアイツに何しようとしてやがったぁ!!」
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