重い瞼を開けると目の前に広がるのは見慣れた天井。……あ、れ…?私の部屋だ。どうして私、自分の部屋に―…?
「気が付きましたか」
「…?」
ぼんやりする意識の中、優しく髪を撫でてくれたのは――。
「…む、くろ…さん」
ボンゴレ霧の守護者、六道骸さんだった。瞬時に甦る記憶。私はベッドから起き上がった。でもそれを骸さんが阻む。
「直ぐに起きてはいけません。名前の言いたい事は分かっていますから」
「骸さん」
「そんな顔をしないで下さい。…幾ら“任務”だったとは言え、自分自身を許せなくなる」
え、任務…?私は困った様に微笑む骸さんを見つめた。相当困惑した顔をしていたのだろうか。骸さんの腕がすっと伸びて優しく頬を撫でられる。
「安心して下さい。あれは…芝居だったんです」
「おし、ばい?」
目を丸くする私に骸さんは全てを話してくれた。
最初、骸さんはファルファッラさんの事を調べて居たらしい。彼もまた彼女の背後に大きな力が働いていると疑っていたからだ。だがその情報収集の最中、事は起こった。
骸さんにファルファッラさんが接触して来たのだ。『私と手を組みませんか』と言って…。当然、笑顔で断る筈だったそうだ。けれどある考えが骸さんの頭を過ぎる。これは彼女の事を探る“好機”なのではないかと。
「…それでボンゴレに相談してみた所『好きにしていいよ』と言われたので、彼女の仲間に加わったフリをしたんです」
さ、沢田さん。どうしてそんな簡単に了解しちゃうんですか…ι
「ですが相手も馬鹿じゃない。仲間になると言っても簡単には信じなかった。だから彼女をボンゴレに忍び込ませたんです。僕を信用させる為に」
話してくれている間中、骸さんはずっと頬を撫で続けてくれていた。それがこの人なりの謝罪の気持ち…何だろうか。私はそんな彼の手に、自分の手をそっと沿える。
「…哀しかったんですよ、あの時、本当に…」
「………すみませ、」
「謝らないで下さい。お芝居だって知らなかったとは言え、私だって骸さんの事、疑ってしまったんですから…。お相子…ですよね、ふふ」
「…名前…」
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