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23.はじまりの 空 **


「!……成る程な。その通りになったって事か」



実際リボーンの言葉通りになったのは綱吉だけではないだろう。恐らく守護者の中の何名かはその通りになっている筈だ。

全く絶世の美女という訳でもないのに、どうしてこんなにも彼女に執着するのか、リボーンは不思議でならなかった。まあそれは自分にも当て嵌まらなくはない事だが、と微かに苦笑を浮かべる。

けれどその表情を一瞬で消し去り、何時も通りの……否、何時も以上に厳しい顔を作る。



「ツナの気持ちは分かった。…だからと言ってお前の言葉を鵜呑みにする訳にはいかねぇ」



先程、綱吉の言った台詞はボンゴレの歴史を変えるだけでなく、これからの幾末までもを変えてしまう重大発言だ。その事をお前は分かっているのか…?リボーンの漆黒の瞳がそう語り掛ける。



「分かってるよ、リボーン…。でもきっと、こうなる事は初めて会った時から決められてたんだ。だからあんなに引かれた。アイツが歌姫だから…ってだけじゃなくてさ」



綱吉は静かに瞳を閉じた。瞼に浮かぶのは彼女の笑顔。その笑顔を見るだけで。彼女の事を考えるだけで胸の奥が幸せな気持ちで一杯になる。こんな感覚は久し振り…、否。初めてかも知れない。



(俺は名前の事が…)





『沢田さん』






(…好き、なんだ……)





その言葉を口にした瞬間、更に想いが大きくなったように感じた。無性に名前に会いたくなって、綱吉は黙って立ち上がる。



「ツナ?」

「もうこの話は終わり。…丁度休憩にしようと思ってたから皆でお茶にしよう、リボーン」



スタスタと部屋を出て行く綱吉の後ろ姿を、リボーンは無言で見送った。



「歴史を変える…か」



綱吉が出て行った後、リボーンはぽつりと呟いた。消え入りそうな、それはそれは小さな声で…。





(簡単に言うんじゃねーよ……ダメツナが…)





一瞬、寂しげに顔を歪めたリボーン…。

けれど、その表情は直ぐに消え失せ、次の瞬間には何時も通りのニヒルな笑みを浮かべていた。



「…それにしてもツナの奴―…。…昔と同じ顔してやがったな…」


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あきゅろす。
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