[携帯モード] [URL送信]
03.嵐と雨の守護者 ***

≪side 獄寺≫
時計の針が午前0時を過ぎようとした時、獄寺の部屋の扉が僅かに叩かれた。
ノックの相手は確認するまでもない。
獄寺は一瞬だけ顔をしかめ、小さくため息を零す。
客人を迎え入れるべく扉を開けると、そこには獄寺の姉、ビアンキの姿があった。

「こんばんは、隼人」

彼女の脇にはサファリカラーのキャリーケースが一つ。

「これ、頼まれていた彼女の荷物」
「…わりぃな。ホテルの様子はどうだった?」
「今のところ特に変わった様子はなかったわ。彼女の事を嗅ぎ回る連中も見当たらなかった」
「そうか」

明らかに安堵の表情を浮かべる獄寺の姿にビアンキは微笑みを浮かべる。

「念の為ホテルに見張りをつけてあるから何かあったら直ぐに連絡が来る筈よ」
「解った。10代目にも報告しておく」

通常ならば個人情報等の理由で第三者が行う事の出来ない手続きが滞りなく進んだ理由。
それは地域住民との繋がりを大切にしている綱吉のおかげだった。
本来なら恐れられる存在のマフィアを、かつての自警団として再び復活させつつある綱吉。
綱吉の人柄に触れた住民の中には、その想いに賛同し、協力してくれる者も数多く現れた。
今回名前が滞在する予定だったホテルも、幸運な事にその内の一つだ。

「チェックアウトも済ませてあるから、彼女にも安心してと伝えてあげて」
「ああ」

獄寺が頷くのを確認すると、ビアンキは踵を返す。

「…もう帰るのか」
「ええ。今日はもう遅いし、今度改めて彼女に逢いにくるわ」

心なしか足取りの軽いビアンキの姿を、扉に凭れながら獄寺は見送る。
その後ろ姿が今朝見た綱吉の姿と重なって見えて、少しだけ胸が痛んだ。

朝、名前を迎えに屋敷を出る綱吉の表情は実に嬉々としていた。
けれど帰って来てからはどこか浮かない顔をしていて…。

『彼女も……違うのかな』

その理由を、部屋の窓から外を眺めていた綱吉が小さく呟いた。
視線の先には山本に案内されながら庭を歩く名前の姿。
緊張を強いられていた先程までとは違い、柔らかな表情を浮かべる名前の様子に綱吉は微笑む。

『もし、そうだったとしても──』

それまで名前から一瞬も目を離す事のなかった綱吉が初めて獄寺を振り返った。

『俺と一緒に彼女を守ってくれる?』

何かを決意しているかのような覚悟を宿したその瞳に、獄寺は奮い立つ。
答えなど、聞かれるまでもない。

『勿論です、10代目』


嵐と雨の守護者
(貴方の願いが、俺の願いです)


[←][→]

第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!