「クロームさん!どうしたんですか!?一体何が」
「ボスに…、名前が狙われるかも知れないから傍に付いてて欲しいと言われたの…」
「私が!??一体誰に…」
「それは…分からない…。だけど、そうボスに言われた時、私は名前の傍に居なかったから…。その間にもし貴女の身に何かあったら、って…」
「…クロームさん…」
そっか。クロームさんの様子が可笑しかったのは、私の事を心配してくれていたからなんだ。私が「風に当たりたい」何て我が儘を言わなければ、彼女にこんなにも心配を掛けずに済んだのに…。
「ゴメンなさい、クロームさん…。でも私なら大丈夫ですよ!ほら!」
「………」
両手を広げて何処にも異常がない事を伝える。
だけど、彼女の瞳は不安そうに揺れたままだ。
う〜ん。他に何か良い方法はないだろうか。そう考えた時、後ろにいる男性の事を思い出した。
そうだ!この人とずっと一緒にいたから大丈夫でしたよ…と伝えれば、クロームさんも、きっと安心してくれる筈。
我ながらこういう知恵だけはよく働くなと、苦笑を浮かべて、私は男性を振り返った。…でも。
「あれ…、いない…」
勢いよく振り返ったその先には、既に誰の姿も在りはしなかった。
月下の出会い
(目に入ったのは夜空に浮かぶ大きな月だけ)
[←][→]