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03.嵐と雨の守護者 **

「お待たせ」

ティーセットを持って戻って来た沢田さんとリボーンさんだ。
部屋に入るなり、私の頭に手を置く山本さんを見て沢田さんは瞳を丸くした。

「なに山本、もう仲良くなったの?」
「ま〜な♪」

ポンポンと頭を優しく撫でられて少し照れてしまう。
山本さんはこういうスキンシップに慣れているようだ。

「あ、あの、お茶の準備なら私もお手伝いします!」

恥ずかしさを紛らわすように慌てて立ち上がると沢田さんの側に歩み寄る。
控え目だけれど高級感のあるティーポットから良い紅茶の香りが漂っていた。

「ありがと。じゃあ、お願いするよ」
「はい」

任せて貰えた事に喜びを感じつつ、豪華なティーセットを前に少し緊張する。
慎重に準備を進める私の姿を沢田さんは穏やかに眺めていた。
それから彼が椅子に腰掛けるタイミングを見計らい、獄寺さんが声を掛ける。

「10代目、コイツの荷物についてなんですが……姉貴に任せようと思います」
「ビアンキに?確かに男の俺達が行くよりも名前は安心出来ると思うけど…」

獄寺さん達同様、沢田さんまでもが何故か渋っているように見える。
獄寺さんのお姉様と言う話だが、そのビアンキさんとは一体どういう方なのだろうか?
紅茶の注ぎ終わったカップをソーサーに乗せ、一客ずつ差し出しながら私はおずおずと訊ねてみた。

「その、怖い方…なのですか?」
「怖いか、怖くないかで言われたら…怖いけど、でも悪い人ではないから安心して」

それはつまり怖い人という事に変わりなく、果たして安心の材料になるのか少々疑問だ。

「それでこれからどうすんだ、ツナ」

ソーサーを引き寄せながら山本さんが問う。
私も緊張した面持ちで沢田さんの様子を窺った。
沢田さんは紅茶のカップに口を付けると、一口だけ口に含む。
静寂に包まれた室内に、コクリという喉の鳴る音がやけに大きく響いた。

「”守護者“を招集しようと思う」
「「!!」」

告げられた言葉に、獄寺さんと山本さんが息を飲む。

「招集の事は以前から考えてはいた。
 年々リングの奪い合いが激化し、近頃は一般人にまで被害が出始めてる。…今日だって──」

ぎゅっとカップの持ち手を強く握り締める沢田さん。
その様子から彼の静かな怒りが伝わってくる。

「名前の事もある。みんなを集める良いタイミングだと思うんだ」
「しかし10代目、芝生頭とアホ牛は兎も角、奴らが素直に従うとは思えません!」

“守護者やリング”。私には意味の解らない言葉ばかりだ。
部外者の私には話せない事もあるだろうし、聴いてはいけない事もある筈だ。
不意に窓の外に目を向けると風に靡く緑の木々が飛び込んできた。

「…私、席を外します。お庭に出てみても宜しいでしょうか?」

ここには居ない方が良い。
そう思って立ち上がろうとした私を慌てたように沢田さんが引き止める。

「ま、待って!構わないけど、一人じゃ危ないから、俺が──」
「良いさ、ツナ。俺が付き合う」

そんな沢田さんを逆に引き止め、変わりに立ち上がったのは山本さんだった。

「俺は難しい話とかは分かんねーし、こういうのはお前達だけの方が良いだろ?」
「あ、あの!お庭の見学くらいでしたら、私一人でも…」
「ここにいる間、名前の護衛はオレと獄寺が任されてるんだ。そうだろ?ツナ」
「そう、だけど…」
「だから決まりだ。──ほら、行ってみようぜ!」

そう言って差し出される山本さんの右手。
私は躊躇いながらもその手を取り、そっと握り替えした。
瞬間、物凄い力で引き寄せられ、勢いあまって山本さんの胸に飛び込んでしまう。

「や、山本さん!」
「わりぃ。ちょっと力入っちまって」

頬を赤く染めながら慌てる私を見て、山本さんは可笑しそうに笑う。
山本さんに手を引かれ連れ出して貰った庭園には、それはそれは綺麗な花々が咲き誇っていた。


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あきゅろす。
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