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35.月下の出会い


バタバタバタ。屋敷内の様子が急に慌ただしくなる。必死に“何か”を探す姿を、物陰から四つの瞳が見つめていた。



「……どうやら動き出したようだな…」

「そのようですね」



声の主は互いに目を合わせ、無言で頷く。

もう直ぐ作戦開始だ。




◇ ◇ ◇


パーティーも終盤に差し掛かった頃。私は一人でバルコニーに立っていた。勿論パーティーが嫌で抜け出した訳じゃないですよ。ちゃんとクロームさんにお願いして、一人にして貰ったんです。

どうしても、外の風に当たりたかったから…。



「風が気持ちいいな」



夜の風は少し肌寒く感じる。でも火照った身体にはこれ位が丁度いい。



「――さて、と。そろそろ会場に戻らないと」



このままではクロームさんが迎えに来てしまう。初めから「5分だけ」という約束だったから。

出来る事なら余り会場には戻りたくない。でも戻らなければいけない。だってこれは歌姫が主役のパーティーだもの。私を新しい仲間だと紹介する為に、沢田さんが開いてくれたパーティー…。

そんな沢田さんの想いに答える為にも、どんな好奇な視線に晒されたって逃げる訳にはいかない。



「よし!」



パンパン。頬を叩いて気合いを入れ直す。再び戦場に乗り込むぞ!そんな思いで勢いよく後ろを振り返った私だったが、


ドンッ。



「きゃっ」

「!」



後ろに人が居た事にも気付かず、思い切りぶつかってしまった。
私は慌てて頭を下げる。



「ご、ごめんなさい!大丈夫ですかっ」

「嗚呼。こっちは平気だ。そっちこそ怪我はないか…コラ」



逆に問い返されたて「はい」と顔を上げる。
するとそこには月の光に反射して更に輝きを増した綺麗な金髪の男性が立っていたのだった。




◇ ◇ ◇


此処に居るという事はこの人もパーティーの参加者なのだろう。けれど彼が身に着けているのはパーティーにはミスマッチな『迷彩服』。余り服のセンスが宜しいとはいえない私でも、そのチョイスはどうかと思います。

でも、そんな格好が気にならない位、とても素敵な人だった。目の前の男性を見つめたまま暫く放心する私。



「おい、本当に平気か」


するとそんな私に男性が再び声を掛けて来る。


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