「…で?どういう意味なんだよ」
「クフフ。簡単な事ですよ。外部から進入した形跡がないという事は、正規のルートで中に入ったとしか考えられない。…つまり今日の招待客の中に、その不審者が紛れ込んでいるという事です」
骸の言葉に三人は大きく瞳を見開いた。同時に『またか』という思いが沸き上がってくる。
前回のパーティーで名前を狙ったのも、ベスティオーラファミリーの策によって、己のファミリーを裏切った一部の同胞達だった。…つまり、今回もまた“裏切り者”が出たという事になる。
「これだからマフィアは信用できないんですよ」
吐き捨てるように呟いた骸の言葉が胸に突き刺さる。『違う』と否定できない事が悔しい。先程とは違う、重々しい空気が辺りに立ち込める。
けれど―…。
「……言っておくけど、僕が気に入らないのはそんな事じゃない」
それを打ち消したのも…彼だった。壁に凭れたまま静かに瞳を閉じる人物……雲雀恭弥だ。
「僕が気に入らないのは、彼らの態度だ。…わざわざ黒フードまで被って、自分達が不審者だと知らせているその態度が気に入らない。……本気で……殺したくなる」
『咬み』が抜けている気がするが…この際それはおいておこう。
確かに雲雀の言う通りだ。どうして目立つ格好をする必要があるのか?
目的があってパーティーに潜入したのなら極力、目立たないように行動するのが常識。なのにわざわざ自分から見つかるような真似をするとは…。何かの策か?それともただの間抜けなのか。
もしくは自分の腕に相当な自信があるのか、だ。
(後者だったら是非、戦ってみたいな。こんなにも僕を苛つかせたんだ。…這い蹲らせるだけじゃあ、全然足りないよ)
雲雀はフッ…と密かに笑みを浮かべる。
それはさながら子供がお気に入りの玩具を見つけた時のようだった。
「なあ、雲雀」
「………何、山本武」
「楽しそうにしてるトコ悪ぃんだけど、俺達もそろそろ動かねーか?相手の正体は分かんねーけど、そいつらの狙いは…決まってんだからさ」
そう。今は同胞の裏切りに心を痛めている時ではない。守護者(自分)の任務を全うしなければ…。
「うむ、そうだな!」
「はい!!」
「…やれやれ、仕方ありませんね…」
「……好きにしなよ」
山本の意見に了平、ランボも同意する。若干二名は嫌々だったけれど。
(誰だか知らねーけど思い通りにはさせないぜ)
敵の狙いは二つに一つ。
空に架ける橋
(ファミリーの象徴“沢田綱吉”か。ボンゴレの守るべき歌姫“名字名前”のどちらかしかない)
[←][→]