去り際に私の頭を撫でていった山本さん。その表情には何処か焦りの色が見えた。これは何かトラブルがあった事確実だ。
大変な事じゃなければ、いいんだけどな…。
私は二人を見送りながら、静かにそう願った。
≪守護者side≫
「先輩!」
「おお、来たかお前達」
山本達が駆けつけると、そこには既に了平、ランボ、そして少し離れた場所に雲雀の姿があった。
二人は全速力で走って来たにも関わらず、息一つ乱す事なく、直ぐ様彼らの会話に加わる。
「それで屋敷内で不審者が目撃されたというのは本当なんですか?」
先程、そう言って二人に連絡を寄越したのは晴の守護者、笹川了平だった。骸の問い掛けに了平は「嗚呼」と大きく頷く。
「“黒いフードを被った怪しい二人組”を警護にあたっていた数名の部下が目撃したらしい」
「そりゃまた随分、分かり易い不審者っスね」
「今現在、笹川氏の指示で屋敷内を捜索中です。…それで少し気になる報告を受けんですが…」
気になる報告?…全員の視線が一斉にランボへと集まる。彼は「はい」と頷きながら話を続けた。
「実はモニタールームのジャンニーニさんにお願いして、画像をチェックして貰ったんです。何処かに不審者が映っていないかと思って…。でも不審者の姿は疎か、外部から進入した形跡も見当たらないそうなんです」
「見当たらない…って。セキリュティーの誤作動って可能性は?」
「ありません。きちんと作動していたそうです」
「「………」」
摩訶(まか)不思議な出来事に山本、了平、ランボは黙り込む。けれど、この二人は違ったようだ。
「…気に入らないね」
「全くです」
雲雀恭弥と六道骸。
彼らは瞳に嫌悪の炎を灯し、苛立たしげに顔を顰める。そんな両者の様子を残りの三人は不思議そうに眺めていた。先ず口を開いたのは了平だ。
「気に入らないとはどういう意味なのだ?」
「…言葉通りの意味だよ。そんな事も分からないのかい?……君は」
「何だとぉぉぉ!!!」
「まあまあ、先輩。落ち着いて下さいって」
今にも雲雀に掴み掛かりそうな了平を、苦笑を浮かべた山本が咄嗟に宥める。それから雲雀…ではなく、もう一人この状況を理解してる人物。骸へと視線を移した。
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