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おやつの時間




「おいマリモー」

「うるっせぇ!!!」



天候は快晴、波も穏やか。


和やかな海の上を、サウザンド・サニー号がゆっくりと進んでいた。

そんなサニー号から聞こえる、いつもの言い争い。



「お前今何食いたい」

「肉」

「そういうんじゃねぇよ!おやつに何食いたいかって話だ!!」


目を瞑って今にも寝そうなゾロにわざと大きな足音を立ててサンジが近づく。


「あー?なんでもいい」

「作りがいのねぇやつだな」

「黙れ」


なお目を開けようとせず、ただあぐらをかいて座っているゾロを見つめる。


「……」

「…なんだよ」


静かになったのを不思議に思い、うっすらとゾロが目を開けた。


「別に。よく寝るなと思ってさ」

「人の勝手だ。ほっとけ」

「おやつどんなのでも絶対食えよ!!」



クソマリモめ、と呟きながらサンジはキッチンへと歩いていった。



「…何作ろうかな」


──たまにはあいつの好きなモンでも作ってやろうかと思ったのに。


人の好意を無駄にするようなやつだもんな、あいつは。



ぶつぶつと心の中で不満を1人愚痴っていると、不意に部屋のドアが開く音がした。


振り返るとゾロがやや眠そうな顔をしながら部屋の中に入ってくるところだった。


ドカ、と椅子に座る。


「なんだ?何か用か?コックは今忙しいんだ」


ゾロの方に体を向きなおして煙草に火をつける。

そんなサンジの様子を気にも止めず、ゾロは口を開いた。



「あれ。この前のやつ食いたい」

「…は?なんだいきなり」

「お前が何食いたいって言ったんじゃねぇか。あれだよ、あれ。緑色したゼリーみたいな」

「緑色のゼリー?」


必死に記憶の中を探す。
そういえば、そんなようなもの以前作ってみた気がする。

ゾロはといえばいつもみたく何も言わずただガツガツと完食してた。


美味いとも何も言わなかったから、これも違ったか、と諦めた気持ちになっていたのに。


「…お前あれ好きなのか?」

「まぁな。いつものも悪くねぇけどな」


さっき寝てたのに、また今にも寝そうに目を瞑っているゾロを見る。



──いつものも悪くねぇけどな。


「んだよ…クソマリモが」


もうすでに寝ているのか返事がない。



…いつも何も言わないから、満足してねぇのかと思ってたのに。


好きなモンねぇのかよ、なんて思ってたのに。



「わかんねぇやつだぜ」


ため息をつきながら、冷蔵庫を開ける。

材料を手にとりながら、こうゆうのが好きなのか、じゃあ次はああいうの作ってみようかな、と考えを巡らせる。



「〜♪」


無意識に鼻歌を歌いながら、リクエストがあったゼリーを作る。

食べてもらう人の笑顔を思い浮かべながら。




おいしいもの作って、人に喜んでもらえるのがコックの幸せ。




──好きなやつに俺の料理食わせて、喜んでもらえるのも俺の幸せ。






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