ショートストーリー
甘い、期待[ミロカミュ]
するりと腰を抱く腕。
とがめる間もなくうまく体を寄せてきて互いの腰骨があたるように、両腕で抱きしめられた。
わざとゆっくり目を上げてみれば、まつげが触れそうな程近くに深い海の色。
「キスしてもいい?」
そういう唇と唇の距離はもう数センチ。
答えを待つ気があったかどうかは怪しいが、ひと呼吸おいてから唇が触れる。
ちゅ、とリップ音を立ててついばむように軽く感触をたのしんだだけで一度離れた。
「断ってもするくせに、何故聞く」
とちょっといじわるく言ってみたら、
ミロはふっと笑い、
「・・・いいよ。って言ってくれるのを期待したんだよ」
わたしはいじわるしたのを少しだけ後悔した。
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