○木陰の眠り姫(都)
「…すぅ…すぅ……」
「…なんでこんな所で寝てんだ。」
物干し場を横切ると近くの木に寄り掛かった影が一つ。
近付いて確認すればそこには合宿手伝いで集められたマネージャーの一人が寝息を立てていた。
「風邪引くぞ、起きろ。」
「…すぅ……」
「おい、起きろ。」
いくら声を掛けても起きる気配のないマネージャー。
野郎なら頭にげんこつでもお見舞いしてやるが、女相手にそれは出来ない。
顔見知り程度の女に安易に触れるのも気が引ける。
「こんな野郎ばっかの合宿で無防備に寝やがって大した奴だ……はあ…」
小脇に挟んでいたジャージの汚れと臭いを確認して、そこまで酷くないと判断しマネージャーの肩にかけて横に腰を落とした。
それから30分位経った……が、一向に起きる気配一つしない。
いつから寝てんのか知らねえが、まさかここで朝を迎えるなんてないだろうな。
「…んぅ……」
「!」
右肩に軽い重みがのし掛かる。
視線だけ右肩に寄越せば数十センチ先にあった小さな頭が寄り掛かっていた。
跳ね返す事も出来るが、加減が分からず反対側に倒れて頭でも打たれたら困る。
かと言って手で避ければ触る事になる。自主的に触るのは避けたい。
「…どうしろってんだ。」
「あーら、若旦那。可愛い子を独り占めは良くなくてよ?」
「松…暇ならこいつを起こせ。触るなよ。」
「触るなって若旦那は触ってるじゃない。」
「自主的じゃない。不可抗力だ。早く起こせ。」
「お嬢さん、早く起きないと隣の狼に食べられちゃうわよー?」
「ああ?」
「……すぅ…」
「あら、こんな近距離で言ってもピクリともしないわね。」
「さっきからずっとだ。」
「どうするの?朝まで一緒にいるおつもり?」
「んなワケねえだろ。だから起こせって言ってんだ。」
「聞こえないなら身体を揺さぶるしかなくてよ。」
「ダメだ、触るな。触ったらセクハラで訴えるからな。こいつが。」
「もうっ、難しい事言わないで頂戴!」
「もういい。はあ…」
「…すぅ…すぅ……」
混ざる寝息と溜め息
(本当に目が覚めないのね、このお嬢さん。)
(あまり近付くな。)
(…ねえ、若旦那。悪戯しちゃいませんこと?)
(松、お前が一番乗りの狼だ。)
(うふふ。可愛い眠り姫にキスをしたら起きるかしら…)
(バカが、近い。さっさと行け。)
(若旦那ってお堅いのね!意外だわ。)
(黙れ…−ガフォ!)
(キャアア!)
女子に気安く話し掛けない、触らない、見ないが若旦那三原則で
でも基本気遣いの優しい男気男子なのでさりげに貸せ。と重い物持ってあげたりしたら胸キュン
付き合ったら俺の妻(嫁)とベタベタしたらすごくいいです
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