○雪だるまに口溶け(仁王)
「おーい、ちょっと待ちんしゃい。」
部室から出た所で呼び止められた声に振り向けば、赤い帽子を頭に乗せた仁王がいた。
「あ、サンタさんだ。」
「サンタさんからプレゼントやるけえのう。」
ほれ、と手に置かれたのは小さい雪だるま。
手袋をしていない手に冷たい温度が凍みて少し身震いする。
「あはは、可愛い。ありがとうサンタさん。」
「どういたしまして。」
「でもせっかくのプレゼントなのに家に着くまでに溶けちゃうね。」
「そうじゃのう。」
すでに小さい雪だるまは下の方から手の体温でじわじわと溶けはじめている。
「溶けてきてる〜。仁王、袋と保冷剤ない?」
「こんな寒い時期に持ってなか。」
「だよね…でも溶けるの勿体ない。」
「雪やし仕方ないのう。」
「あ、写真撮って!はい、携帯。」
「そこまでして残すもんか?」
「うん、残しときたい。撮っていいよ〜。」
「はい、ピヨッ。」
「あはは、ピヨッて。ありがとう。」
「つか、なんで雪だるまにチューしたんじゃ。」
「可愛いから!」
「……そんじゃ俺も雪だるまになろうかのう…」
「あ、いいこと思い付いた!」
「聞いてなか…」
「……はい、これは私から仁王にプレゼント!」
「雪だるま。」
「撮るよ〜、はいっ、ピヨッ!」
「ちょ、お前さん撮るの早すぎじゃ。」
「雪だるまと見つめ合ってる!」
「変な顔しとる…」
「じゃあ、もう一枚!雪だるま持って二人で写ろうか。」
「そろそろ手が限界ぜよ。」
「すぐ撮るからちゃんと決めてね!」
「ん。」
「はーい、雪だるまにチューまで3、2、1……っ!?」
赤い頬っぺの雪だるま
(よく撮れとるのう。)
(私、変な顔になってる!)
(お、見てみんしゃい。雪だるまもチューしとる。)
(あ、本当だ!可愛い〜。)
(俺はびっくりしとる後ろの雪だるまのが可愛いがの。)
(雪だるまって私の事じゃなかったの!)
(おーおー、真っ赤になって溶けてしまうナリ〜。)
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