夢じゃない
チュンチュンっと、雀の鳴き声がする。
嗚呼、もう起きなきゃな…
起きなきゃ三郎が怒るもんなぁ…
「遅いぞ竹谷!」
あ、もう一人起きなきゃ怒る奴いたな…
「俺の朝は豆腐から始まるんだ、竹谷遅れたら豆腐譲れよ?」
部類の豆腐好き兵助には、豆腐で宥めるのが一番だって三郎が言ってたっけ。それって、餌付けだよな・・・
そんな馬鹿な日常で、笑って(大方苦笑いだけど)俺らを見守る保護者役が一番怒らせちゃいけない奴でさ…
「はち、自分の体は自分で管理しないといけないでしょ!こんなに熱が出るまでほっといて!!」
この前委員会で疲れてて、眠くて髪の毛を乾かさずにそのまま寝たら案の定風邪ひいて雷蔵を怒らせたんだ。
あん時は凄まじかった。あの後、雷蔵と三郎と兵助が交代で様子見にきてくれたっけ・・・
あれには感謝してるよ、本当に。
嗚呼、早く起きてあいつらに会わなきゃな。
会って食堂に行って、食堂のおばちゃんの旨い朝飯食って勉強して昼飯食べて毒虫たちの餌をやって、それから……
「……け…ん」
だ、れ…?
「あ……だ…、たけ…く……」
…あっ…そっか
「朝だよ!起きて、竹谷くん!!」
「…ぁ……」
「竹谷くん、おはよう!」
「おはよう、安藤。」
嗚呼、夢じゃない。
だって、夢の中で見たあいつらがいないんだから。それに、あいつらが俺を起こすんじゃない。今は、安藤が俺を起こすんだ。
だから、夢じゃない。現実だ。
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