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それは食べ物ですか?



竹谷くんも私も少し状況が理解でき、時間も夕食どきなので食事をする事になった。
だけど、竹谷くんはいらないと言った。
不思議に思ったけど、本人がいらないと言ったのだからいらないのだろう。お腹が空いたと言われれば、何か適当な物だって作れるので本人の意思を尊重した。



今日は、つけうどんにしてみた。
熱いうどんを、冷たい水に入れて洗う。仕上げに、うどんを氷水に入れれば完成。後は、つゆを出せば食べられる。
これでよしっ!

あ。竹谷くんは何してるかな?
何にも説明してないから、テレビなんて見られないし。今まで退屈してたんじゃないかと、今更ながら自分は何をしているのだと気づく。
もう、独りじゃないのだ。
馬鹿たれと思いながら、リビングにいる竹谷くんの様子を見に行く。



「た、竹谷くん!ごめんねっ。」

「わわっ!ど、どうした安藤!?」



いきなり現れた私に驚いたのか、竹谷くんは何か持っていたらしく何かを落としそうだった。
それの様子に、少し私も?を浮かばせながら先刻考えていた事を思い出し、竹谷くんに伝える。



「あ、いや。竹谷くん、何もなくてつまんないんじゃないかって…」

「安藤……」

「本当っ、ごめんなさい気づかなくて。」

「いや、ありがとう。俺、そういうの気にしてないから。」



と、またさっきの笑顔を見せた。
不覚にも顔が赤くなりそうで、竹谷くんの持っている物を聞く事にした。
嗚呼、駄目だもう絶対赤いなぁ。



「竹谷くん、それ何?」

「あぁ、これ?これ、“ 忍者食 ”って言うんだ。」

「忍者食?」

「あっ…。」



私が聞き返した後、何かしまったとでも言うような顔をした。私に何か隠しているらしい。



「まぁ、いいか。」

「?」

「本当は知られちゃいけないけど、…俺“ 忍者 ”なんだ。」

「に、忍者!?」

「嗚呼。だから、忍者の携帯食の事を忍者食って言っちまったんだ。ほら、お世話になる事だし食べ物までお世話になるのも気が引けるっつーか、悪いつーか……」



竹谷くんが何か説明しているが、私は気にしていられなかった。
だって、忍者だよ!忍者!!竹谷くんが、忍者…

あ、じゃ私の首に当てた物って。



「苦無!?」

「はっ!?」



竹谷くんの反応は無理も無い。
いきなり私が、何の関係もなしに“ 苦無 ”と言ったのだから。



「いや、私に当たってた物は苦無かって思って。」

「あ、嗚呼。そうだ、苦無だよ。ほら…」



と、懐から竹谷くんは苦無を取り出した。
反射してキラリ光る黒の光沢は、何でも切れそうな感じがした。いや、実際切れるのだろうけれど。
今更ながら実物を見てしまうと、ぞっとする。



「あの時は、本当にごめん。悪かった。俺も忍者の端くれだから、身の安全確保の為に…」



あっ…
そんな事言わせたくて来たわけじゃないのに。
私は、本当に馬鹿たれだ。



「竹谷くん、もうその事は大丈夫だから!」

「…でも。」

「だって、私生きてますし。かすり傷程度だし、大丈夫。そんな事よりも、」

「?」

「それ、忍者食。忍者食って、美味しいんですか?」

「いや、不味い。」



「食べてみるか?」と聞かれ、私は忍者食と呼ばれる粒を食べてみた。
味は…なんと言い難い。
薬っぽい味って言うのかな?
確かに、美味しい?と聞かれると不味いと言いたくなるのは分かった。うん、これは人間が食べる物じゃない。



「感想は?」

「…美味しくはない。」

「だろ!」



その後私は、竹谷くんにこんな物を食べさせるべきではないと思い無理やり椅子に座らせて先にうどんを食べてもらう事にした。
うどんを目にした瞬間、竹谷くんの腹の虫が鳴った。


あきゅろす。
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