第一印象は恐い人 低い声と共にひやっとした物が、私の首にひっついている。 普通の刃物(カッター)とは少し違う。 「もう一度聞く。お前は何者だ。」 焦っているのか、首に当たっている物を少し押しつけた。 「さぁ、早く言え」と言わんばかりに。 だが、私はそれどころではない。こんなに強い殺気というものを感じたことが無い私にとって、それは凶器。 それは、恐怖の塊そのものなのだ。 たが相手が求めている事を言わなければ、首にひっついているひやっとした物で私は…… そう思えば思う程、私の体はカタカタと小刻みに震えだした。 「…ぁ、わたしっ……。」 「何者だ。」 「安藤、亜由美で、す…。」 最後の方は、擦れそうな小さな声しか出なかった。それでも、相手はきちんと聞こえたみたいで聞き返してはこなかった。 だが、まだ緊張した空気は一向に変わらない。 「安藤っと言ったな。」 「はっ、はい。」 「……その、悪かった。」 「…ぇっ?」 「痛かったろ、ここ。」と言い、ひやっとした物はもう首から退かされていて、今度は少し暖かい手が触れてきた。 もう、殺気なんてものはない。 そして、優しい声。 私は、緊張の糸が切れたのか。 はたや、安堵したのか… 私の目から、涙が出てきた。 |