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飼い主



無収穫。


私たちの今の現状を伝えるならば、この言葉が一番しっくりきている。竹谷くんも私も、公園にいる人という人には聞いて周ったが三毛猫情報はなかった。
折角この暑い日差しの中頑張ったというのに、無常にも灼熱の太陽は西へ傾き夕日へと変化していく。もう公園には、人はほとんどいない。
私たちは、公園のベンチで休憩中。
竹谷くんは、三毛猫を膝の上に乗せ右手で背中を撫でながら豪快に座っている。撫でる右手は、休むことなく動く。



「あー…、やっぱ野良なんじゃないか?」

「かもしれませんねぇ。」

「でも、手入れいいしなぁ〜。」

「きっと、優しい人が手入れしたんですよ。」

「でも、見かけたことないとか言ってたし。」

「きっと、もっとここより遠いんですよ。」

「じゃあ、長旅だったな。」

「長旅ですね。」



竹谷くんと私は、そんな会話をしていた。どちらも疲れているのか、途中から三毛猫を長旅扱いしている。
三毛猫は、こんな会話を聞いていたのか一つ欠伸をした。
多分、この会話の呑気な声が眠気に誘ったのだろう。でも私は、この会話を聞いているからではなく、竹谷くんの三毛猫を撫でる右手の手つきで癒されたのではないかと欠伸の原因の真意を導き出した。
それでも、三毛猫の考えることなんて分からないのだが。



「さて、私たちも帰りましょうか。」

「そうだな。もう、夕方だし。」

「今は夏で日が長いですけど、夜になるのあっと言う間ですからね。」

「まったくだ。お陰で実習時間が長引くんだよ。」



最後に竹谷くんは、何かに悪態をついた。最後の方は、小声で聞こえなかったが確か「くくち」や「はちや」が聞こえた気がした。

私はそんなことは気にせずに、公園の出入り口の方へ進む。

すると、何かが私の横をスッと横切ったような気がした。ふと後ろを向くと、竹谷くんが三毛猫を抱く態勢で固まっていた。竹谷くんを見た後、また公園の出入り口の方に顔を戻す。
すると、三毛猫がタタッと走っている。そして、三毛猫が辿り着こうとしている先には“ あの人 ”がいた。


私は、学校以外会うことはないだろうと思っていた。
そう思っていたからこそ、私は心底驚き目をおもいっきり広げ“ あの人 ”を見つめた。
あっという間に、三毛猫は“ あの人 ”の元に収まった。
つまり、三毛猫の飼い主はなんの悪戯なのか“ あの人 ”であったのだと知れた。



「…安藤、か?」

「えっ。」

「もう、遅いから早く帰れよ。」



そう言って“ あの人 ”は、三毛猫を連れて帰っていった。
私は、竹谷くんの存在を忘れてただ“ あの人 ”が先程立っていた場所をぼーっと見つめた。
いや、見つめることしか出来なかった。
だって、“ あの人 ”は


私の同じクラスの 鈴木 竜樹


私の好きな人なのだから…


あきゅろす。
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