Trap[オスカー(アンジェ)]
アンジェリークのオスカー夢。
小悪魔ヒロイン。
オスカー、ちょろいかも……閲覧注意。
今日はオスカー様との楽しいデート、の筈なのに。
「オスカー様、今日はうちに寄ってくれないの〜?」
「すまないな、お嬢ちゃん。今日は遠慮しとくよ。」
オスカー様は自他ともに認めるフェミニスト。
それはわかっていたけれど……。
「あら〜、オスカー様じゃない。」
また、だ。
これで何度目かわからなくなる程、デートは中断されまくっている。
ライラは肩をフルフルと震わせた。
(……いくらなんでも限度ってものがあるわ!)
こうなったら私だって負けられない。
一歩、二歩、と徐々に後退りオスカーから離れる。
オスカーからある程度、距離が開くとライラはすっと瞳を閉じた後、微笑みを浮かべた。
オスカーではなく見知らぬ男性に向けて、だ。
すると、男性は思惑通りライラに近いて来る。
「彼女、暇してるの? オレとお茶しない?」
見事に引っ掛かってくれた、内心で思いながら態度は戸惑っているように装う。
「え? わ、私ですか?
えっと、どうしよう……。」
片手を顎にあて潤んだ瞳で上目遣いに困ってるように答える。
それを見ていた違う男性が、これまた見事に引っ掛かってくれる。
「おい、困ってるじゃないか!
君、大丈夫かい?」
「あっ、はい。ごめんなさい……ちょっと驚いてしまっただけなんです。」
力無く微笑んでみせる。
こうなればもう男達はライラの掌の上。
「ん? …お嬢ちゃん……?」
女性と話していたオスカーがやっとでライラが側にいない事に気付く。
視線をさ迷わせたオスカーの目に入ったのは、数人の男性に囲まれたライラの姿だった。
「っ! お嬢ちゃん!!」
驚愕したオスカーがライラの元へ駆け寄る。
ライラの腕を引き寄せ、庇うように自分の腕の中で包む。
「悪いが、このお嬢ちゃんは俺が先約済だ。」
鋭い視線に、いつもより低く感情のない声。
「オ、オレらは別に彼女に何かしてた訳じゃ……。」
男達はたじろぎながらも、反論する。
「ならば何故、お嬢ちゃんは震えているんだ?」
男達に睨みをきかせるオスカーにライラが口を挟んだ。
「あの…オスカー様……私は大丈夫ですから。」
自分を見つめ微笑んでみせるライラにオスカーは安堵して男達を掃う。
「大丈夫か? お嬢ちゃん。」
「…は…い……。」
「おっと。無理するんじゃない。」
足元をふらつかせるライラをオスカーはひょいっと横抱きに抱えた。
「オスカー様!?
あ…あの、大丈夫ですから……。」
驚き狼狽えるライラに微笑みだけを向けて、無言でオスカーが歩き始める。
その様子にライラは黙って大人しく抱えられたままでいた。
ライラの自室まで来た所で、オスカーはライラを開放しゆっくりと降ろす。
「……悪かった、ライラ。」
「え…?」
小さな声で呟かれた言葉にライラは瞳を瞬かせてオスカーを見る。
「お嬢ちゃんが俺の側にいるのが当たり前になっていて…気付かなかった……。」
オスカーはとても苦しそうな瞳でライラを見つめる。
柔らかな白い頬にそっと触れ、髪を撫で抱きしめる。
「もう俺は君なしでは生きていけないようだ。」
ぎゅっとライラを一層強く抱きしめる。
「…オスカー様……。」
ライラが白く細い手をオスカーの背にまわす。
「愛してる、俺の唯一の天使……ライラ。」
愛しそうにライラを見つめ、そのまま顔を近付ける。
ライラはそれに応えるようにそっと瞳を閉じた。
甘い甘い口づけ。
それは最後の媚薬。
「オスカー様……ずっと私だけを見つめてくださいね。」
ライラが少しずつ落とした甘美な毒。
それはフェミニストなオスカーを自分だけのものにする為の罠。
女の子はいつでも小悪魔になれるのよ?
「ああ、ずっと君だけを見つめてる。」
ほら、もう貴方は私だけのもの。
ずっと私の虜にしてあげる……。
小悪魔な私の作戦で、この甘美な毒で──。
初出2005.11.9.
再掲載2020.10.29.
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