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きみと一緒に[火原(コルダ)]
金色のコルダ、火原和樹夢。
短い、甘くもないかも。





いつも楽しく! が、おれのモットー!



だったハズなんだけど。

きみと出会ってから何かが変わってきたんだ。


楽しいだけじゃダメなのかなって……。

おれは少しだけ変わらなきゃいけないんじゃないか。

そう思うようになったんだ。



きみの隣にいたいから。


きみに頼られるようになりたいから。


変わらなきゃ、って思った。



どうすればいいのかなんて、わからなかったけど。

一生懸命考えたんだ。

きみと一緒に歩いていく為に出来る事を。












「おはよう! レインちゃん。」


元気良くあいさつすると、レインちゃんはいつものように笑顔を返してくれる。


「おはようございます、火原先輩。」


今ではこれは日課。

レインちゃんと一緒に登校したくて、この時間にここを通るようになった。

ちょっと寝坊した日は朝食をぬいても、この時間に来れる電車に乗るんだ。

本当はレインちゃんの家まで迎えに行って一緒に行きたいけど。


さすがにそんな勇気はなくて、これが精一杯。

でも、これでも十分楽しいからいいんだ!

ってダメだよね。

変わらなきゃって思ったばかりなのにっ。

楽しいだけじゃ、きっとダメなんだ。

恐いけど、勇気を出さなきゃ!


「じゃあ、火原先輩。私はこっちなので。」

「え!?」


いつの間にか校門まで来ていた。

せっかくレインちゃんと登校してるのに、考えてばかりいたから全然話さないで歩いて来ちゃったんだ!

レインちゃんに悪い事しちゃったよね!?
あ、謝らなきゃ!


「ご、ゴメン! レインちゃん。」


勢いよく謝ったらレインちゃんは凄く驚いた顔になる。


「ど、どうしたんですか?
私、火原先輩に謝られるような事されてませんよ?」

「だ、だってせっかく一緒に登校してたのに、おれ全然話さないで。」


ああ、とレインちゃんが小さく笑う。


「ふふ、気にしてませんよ。
火原先輩が考え事してたのは分かりましたし、一緒に登校できただけで楽しかったですから。」


そう言ってにこっと微笑む。

その笑顔が可愛くて、やっぱり勇気出さなきゃって思った。


「あ、あの、レインちゃん!」

「はい?」

「え、えっと…レインちゃんさえ良ければなんだけど。」


心臓がドキドキうるさい。


「明日から、一緒に登校しない?」


きょとんとしたレインちゃんの表情が恐い。

…やっぱり迷惑?


「あ、あの嫌なら……。」

「嫌じゃありませんよ」


言いかけた言葉はレインちゃんの言葉に遮られた。


「ちょっと驚きましたけど、嬉しいです!」


レインちゃんの笑顔におれの心は跳びはねて。


「ほ、本当!? やった〜!」


体も跳びはねた。


「ふふ。火原先輩、大袈裟ですよ。
じゃあ、私はこっちですから行きますね。また後で。」

「うん! レインちゃん、授業頑張ってね!!」


先輩も、と言ってレインちゃんは普通科の方に歩いて行った。



レインちゃんのお陰で。
おれ、わかった気がする。




おれはきみに特別な好きを抱いてるんだ。


その想いはたぶん楽しいだけじゃないんだよね。



たった1つの約束をするのにも、とても勇気がいるもので。


でも、きみが笑ってくれたならいつもの100倍楽しいや嬉しいがある。



楽しいだけじゃないものに、少しドキドキするけど。



おれは変わっていくね。

誰でもない、きみと一緒にいる為に。




今度は何を話そうか?

ねえ、レインちゃん。



ううん、今度からはライラちゃんって呼ぶね。




きみは許してくれるかな?


許してくれるといいな。


どうやって切り出そうか?


きみはどんな表情をするかな?


ドキドキするけど、ワクワクもする。





きみと出会って、きみに惹かれて。


新しい自分に出会えた。





おれ頑張るよ!


きみと一緒に歩けるように。


ずっと、きみの隣にいられるように。





いつか、きみに伝えよう。



ライラちゃん、きみが大好きだよ!





初出2005.10.29.
再掲載2020.9.22.

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