空色[ギアス]
CPなし。ロスカラのギアスエンド後。
独白っぽい話。
失った世界の色はみんなによって鮮やかな彩りを取り戻し
僕の世界はとても綺麗なものになった。
君たちならば、汚れた過去の僕をも受け入れてくれるのかもしれない。
だからこそ僕がとるべき選択肢は一つなんだ。
「ありがとう。」
僕が守りたい人たち。
大好きな、大切なみんな。
僕に色をくれて──ありがとう──。
『もし、僕の記憶が戻って、その正体が君たちに害を及ぼすような人間だったとしたら……。』
『僕を殺してほしい。』
俺たちの秘密を知ったとき、あいつは迷わずそう言った。
自分から探った訳でもない、言わば被害者のような状況で。
俺たちを守りたいから、と。
初めて……だった。
ナナリーを守る事しかなかった俺を。
守りたい、と言ってくれた人間は。
『僕は、君たち二人を守りたい。』
そんな風に言われたのが嬉しくて。
『僕は元々ここにいてはいけない人間だしな。
消えても問題はないんだ。』
そう言った、あいつの言葉が悲しかった。
そして、俺は──無表情で無関心で、得体の知れない人間だと。
会長達と違い、あいつを、ライラを警戒していた事が間違いだったと思い知った。
俺たち兄妹を大事だと、守りたいと言ってくれた、ナナリーが懐いた優しい人間。
それがライラという人物。
俺はライラに興味と好意を覚えた。
C.C.によってライラが黒の騎士団に入り、ゼロ…つまり俺の右腕だと言われるようになり
ゼロとしても俺個人としてもライラは欠かせない存在になっていた。
これからもっと共にいる時間を共有するものだと
俺は珍しく信じて疑わなかった。
だが──……
「──みんなが、僕を忘れますように。」
それは泡沫<うたかた>の夢のように。
ルルーシュ達は自分の気付かぬ内にライラという色を失った。
俺は今日も学園祭の準備に走り回っている。
飯を食べる暇もなく、仕方なくC.C.のピザを2分で食べた。
珍しくピザを残したC.C.に嫌味の一つを言って部屋を後にし、扉を閉めた直後。
「ルルーシュ、さすがにお前でも分からなかったか。
これは残したわけではない。」
そんなC.C.の呟きが聞こえた。
「ライラ。」
C.C.から出たその名にドクンと鼓動が脈打つ。
何か大切な……何か。
「ルルーシュ! いたいた。
ほらほら、急いでよね。」
会長の声でハッとした俺は会長に背を押され、半ば強引に仕事に戻らされる。
…俺は…大切な何かを、愛しい誰かを、失くしたのかもしれない……。
そんな確証のない想いを必死で抑えながら。
「なぁ、妖精君。
もしもお前が俺の前に現れたら仲良くできそうな気がするよ。」
ポツリと空に呟いた。
「ライラ。
ルルーシュは絶対遵守の力をもってしても完全にはお前を忘れなかったぞ。」
小皿に乗せたピザを持って空に語りかける。
『未練はある。だから未練はない。』
瞳を閉じれば頭の中で木霊するライラの言葉。
私はお前が最後に言った言葉が忘れられない。
「お前には本当に驚かさせる。
あんなに悲しくて、それでいて強い言葉は初めてだ。」
ふっと笑い、そっとピザをテラスに置いた。
待ってましたとばかりにピザをつつく鳥たちに伝言を伝える。
「眠っている男にこう伝えてくれ。
次に目覚めたときも、世界がお前にやさしいことを祈っている……と。」
なぁ、ライラ。
もしも…もしも、ルルーシュがギアスの力に打ち勝ちお前を思い出したなら……。
そのときはもう一度──。
空に腕を伸ばしたC.C.の手の先を鳥たちが羽ばたく。
その空はどこまでも蒼く澄んでいて。
まるであいつの瞳のようだった。
ライラと彼らを繋ぐキセキの色のように。
2008.6.10.初出
2020.03.25再掲載
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