友達"だった"人[ギアス]
本編、最終話後。スザク批判。
ロスカラ設定の女主人公で、文化祭エンド後。
あなたは私の友達よ。
記憶を失くした私に優しくしてくれた
とても大切な友達──"だった"わ。
ブラックリベリオンから一年経とうとしている頃。
私はあの深い眠りからまた目覚めてしまっていた。
否、目覚めさせられていた。
「……スザク…。」
「良かった、ライラ。僕を覚えているんだね。」
ナイトオブラウンズの制服を着たスザクは私の呟きを聞いて至極嬉しそうに笑った。
そのまま近付いてくるスザクから無意識の内に距離をとる。
「ライラ……心配しなくても大丈夫だよ。
君を研究所なんかにはやらせないから。」
スザクの笑顔と言葉に私は怒りで表情を凍らせた。
「ナイトオブラウンズ、セブンの権限で、ね。」
「よく知ってるね。あ、誰かから聞いたのかな?
とりあえずここじゃ何だから移動して…。」
パシッと辺りに乾いた音が響く。
差し延べられたスザクの手を私が振り払ったからだ。
「わ…たし…に、私に触らないでっ!」
「ライラ……?」
キョトンとしたスザクを睨みつける。
「眠っていた私は知らないと思った?
あなたがゼロを……ルルーシュを踏み台にして“そこ”にいる事を!」
ルルーシュに一番言ってはいけない言葉を投げたという事を!
「何でって顔してるね。
ここに連れて来られる前に、あなた達が必死に私を探してる間にC.C.から聞いたのよ。」
「ライラ、C.C.を知ってるの!?」
「ええ、知ってるわ。
けど、今はそんな事どうでもいい。
ねえ、スザク。君は“そこ”にいる為に何を失った?」
いくつ、失った?
その問いにスザクは悲しそうな表情を浮かべる。
「大切な主と友達を失ったよ。
だから僕はこれ以上、大切なものを失わなくて良いように…。」
「間違いだよ、スザク。
あなたはもっとたくさん失くしてる。」
「え……?」
私はスザクの前に拳を出して見せる。
まずは人差し指を立てて、一つ目。
「あなたを迎え入れてくれた、あたたかい生徒会のメンバー。
あなたは罪のない彼らの記憶をねじ曲げた。」
「そ、れは…。」
次に中指を立てる、二つ目。
「信頼関係、あなたは大切な人に嘘をつき続ける。
優しくて健気なナナリーの一番大切な兄を奪ってから、ずっとね。」
「それはっ! ルルーシュがゼロだったから!!」
「だから? 妹のナナリーにも罪があるって言うつもり?
ナナリーを利用してルルーシュを試そうとしてるのも、ただ兄を慕っている純粋なナナリーへの罰かしら?」
「…っ……。」
言葉を失くすスザクに構わず薬指を立てる、3つ目。
「あなたが守るはずのたくさんの日本人の命。
同時に日本人の心を持った人たちからの信頼。」
続けて小指を立てる、4つ目。
「あなた自身の信念。
あなたは過程が大事だと言っていたね。
なら、友達を売って手に入れたものは正しい過程なの?
ルルーシュは結果が全てだという信念を守って言い訳すらしなかったのに…、あなたは随分アッサリと自分の信念を曲げたね。」
スザクがぐっと拳を握りしめる。
親指を立てて、5つ目。
「……私という友達。」
「え?」
俯き言葉を失っていたスザクが小さく声をあげた。
「いえ、好きな人……だったかな?」
瞳を細めて微笑んでみせる。
スザクが私に対して恋情を抱いているとC.C.が言っていた。
ならば、あなたに最高のお返しをあげる。
「私はあなたの存在を許さない。
あなたは私が殺してあげる……ルルーシュの代わりに、ね。」
ハッキリと言葉にした。
「あなたは数字にすれば数え切れないほどのものを失くしている。
1番大切な、あなたが守ろうとしていたものすらも。」
「あ…あぁ……っ。」
「結局、あなたは自分自身を正当化したかっただけに過ぎないのよ。」
膝から崩れるスザクを蔑むように見下ろす。
「良かったね、ナイトオブラウンズのあなたを否定するものは私くらいしかいないわ。
満足でしょう?」
私ってこんなに冷たい声が出せるのね、あなたのお陰で新たな発見をしたわ。
「そうそう、私を無理矢理目覚めさせた対価として、あなたの温情は有り難く受け取っておくわね。
研究所なんかに戻りたくはないから。」
スザクに背を向けたまま、ゆっくりと視線だけを向ける。
「さようなら、スザク。
あなたの存在が消える日を楽しみにしているわ。」
満面の笑みを浮かべて、その場を後にした。
君がルルーシュにしたように。
今度は私があなたに最高のお返しをあげる。
『私たち、友達でしょ?』
そう優しく微笑みながら──。
2008.6.16.初出
2020.03.19.再掲載
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