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このときだけ、彼は私のもの!!



 「葉、」


 縁側でのんびりお茶を啜っている彼に小さな声で声をかけた。


 それは本当に小さくて、彼に聞こえるか、聞こえないかと言うぐらいの大きさだった。


 「んー?なんだぁ」


 間延びした、弛い声と共に彼は振り返った。


 あんな小さい声で聞こえたほど、彼の中に私が存在したのか、それとも、ただ静かすぎて聞こえただけなのか。


 そんなのどっちでもよかった。ただ彼が返事をしてくれたのがたまらなく嬉しかった。


 「・・・修行、しなくていいの?」


 アンナはどこか出掛けていて、私は彼の修行を見ているように言われた。


 アンナが出ていって暫くは修行を続けていたが、修行を止めて、それから縁側でお茶を啜ること早30分。


 「アンナ、帰ってきちゃうよ?」


 うげぇとした表情を浮かべていた葉だがぱちぱちと瞬きをして、それからふんわりと笑った。


 「いいんよ、」


 ――、今はこの空間が気持ちいいだ。


 いつもなら金魚のフンの如く葉にくっついている阿弥陀丸もいない。


 ただ葉と私だけしかいないこの空間。


 再び背を向けている葉の背中を見ながら自然と頬が上がるのがわかった。


 ほんのり熱と赤みを帯びた頬を隠すように隣においてあるお盆の上の、冷たい麦茶を手に取り煽った。


 カラン、


 涼しげに、少し溶けた氷の音が響いた。


このときだけ    
    彼は私のもの!!




090703 執筆
090709 更新 哀



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