雨が降るとある日の非日常
「siht!!」
今日はほとほとついていないらしい。空を見上げ、政宗はらしくもなくそう思った。今日はいつもよりしつこい女達に、授業をサボれば小十郎に見つかる始末。おかげで全部の授業を受けさせられた。それに・・・。
「あいつにあってねぇな、・・・・」
曇天が広がる空は己の心と同じ灰色。
「rain、か」
朝、小十郎がなんか言っていた気がするが、それに耳を傾けなかった己は傘は持ち合わせていない。
「雨がどうしたのだ?」
静かに降る雨と己しか存在しないここに第三者の声が響いた。
「・・・幸村」
後ろを振り返ると赤いあいつに似合わない青の傘をもった幸村が立っていた。
「帰ったんじゃなかったのか」
にこやかに笑みを浮かべて幸村は政宗の隣に並んだ。
「あぁ、佐助に残されておって・・・・、雨がどうかしたでござろうか?」
先ほどの政宗と同じように空を見上げた幸村は不思議そうに政宗を見た。
「・・・いいや」
ゆるりと頭を振った政宗は俯く。その口元には自嘲めいた笑みが浮かんでいる。
「政宗殿・・・」
政宗の様子に手を伸ばした幸村。その手は政宗の頭に届く前に政宗の手によって捕らえられた。
「まさ、むねど、の?」
ぐいっと引っ張られて政宗に倒れこむ幸村。
「少し、このままで・・・・」
ぎゅっと力をこめる手。女のように華奢でもなく筋肉もついた幸村はこの程度では壊れることはないだろう。無意識に緩めていた腕の力を強くする。しかし、意識の片隅で幸村は痛くはないだろうかと考えた。
「まっさ、むねっどの」
苦しげな声をあげる幸村。それでも政宗は力を緩めない。
「・・・っ」
幸村の首元に顔をうずめる。
「・・・大丈夫。某はどこにも行かないでござるよ」
握られていない方の手は政宗の拘束から逃れ、政宗の頭にのせ、なでる。
「ゆき、むらっ」
唇から洩れるように呟かれた言葉は擦れている。切ない声を上げる政宗はゆるゆると力を緩めた。
「大丈夫でござる。某はここにいるだろう?」
「・・・あぁ」
ゆっくりと顔をあげた政宗は行く村と視線を絡める。
コツン
おでことおでこが音をたててくっついた。
「・・・ありがと、な」
きれいに笑った政宗はそのまま顔を近づけた。
チュッ
わざとたてたリップ音。遠ざかっていく政宗の唇。
「まさむねどの!?」
顔を赤くした幸村は照れ隠しのように声を上げた。そしてそれを分かっていたようにくつくつと笑う政宗。
「帰ろうか」
幸村が落とした傘を拾い、外に向かって広げる。後ろを振り返った政宗は穏やかに笑っていた。
「はい!!でござる」
にぱーと無邪気に笑みを浮かべた幸村はするりと傘の下へと入って行った。
雨が降るとある日の非日常
(そういえば、幸村。佐助はどうしたんだ?)
(佐助は先に帰ったでござるよ)
(先に?一緒に帰んなかったのか)
(セールがあると言っておった)
(セールって・・・)
fin
090319 哀
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