出会い2
ドガっ
バキッ
今日はなぜか良い気分でたまたま通りかかったふざけた奴等を感情のままに咬み殺した。
ブンッ
トンファーに付いた血を払い落す。
ただの草食動物だけだと荒ぶった感情が治まるどころか高まるだけで物足りなさが残る。
「・・・ちっ」
血溜まりに伸びる男たちを冷たい瞳に映して雲雀はそこを去って行った。
*****
昼間の高ぶった感情を抱えたまま夜の見回りをしていた雲雀。
「・・・・?」
不意に聞こえた何かに歩みを止めた。
耳を澄まして音を感じとろうとする。
「・・・・・・路地裏?」
聞こえてきた方向は路地裏で、その音に集中するように目を閉じた。
「・・・・歌?」
ところどころ聞こえる音は歌のように感じる。
「・・・・っ」
こんな時間に歌を歌っているなんて、と眉をひそめた。
歌を歌っている人物を咬み殺す、とまるで言い訳するように一歩足を踏み出した。
しかしそれはまるでその歌に誘われるようだった。
(・・・。なんなのさ。この気持ちは)
いいようにない気持にとらわれ歩む足を止めようとするが、意に反してその歩みは止まらない。
そのままふらふらと歩いていくと路地裏の少し開けたところに出た。もうその頃にはかすかに聞こえていた歌ははっきりと聞こえていて、わずかに高いアルトの歌声が自分の知らない曲を紡いでいた。
新月の、ましてやこんな夜中にはどこの家も明かりはついていない。
しかし、やはり地球温暖化が進んでいるこの時代、数メートル先は見ることができる。
はずなのだが視界には誰も映らない。
ゴッ
どこにいるかわからない相手の歌声を頼りに足を踏み出すと足に何かがあたる。
「!?」
じっと先を見ていたせいか、またはこの歌声に聞き惚れていたせいか、足元を疎かにしていたようでぶつかるまでそこに何かがあることに気づかなかったことに愕然とする。
沸き上がる苛立つ気持ちで足元を見れば気絶している黒づくめの男の姿。
並盛の秩序が乱されていることにきつく眉を寄せた。
「ねぇ、」
男を強く足蹴りにして、足早に歌う人物に近づく。
声をかけたことで歌はやんでしまったが。
「・・・君は、」
暗闇の中、一瞬だけ見えたのはニヤリと笑った、いつも草食動物で群れているアイツで。
君は一瞬で消えてしまったけれど
(僕には分かったし君は)(確心犯なんでしょ)
(…ふぅん。君は草食動物の皮を被った)(肉食動物だったってわけね)
(いつの間にか沸き上がった苛立つ気持ちは消え失せていた)
-*Fin*-
081130
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