出会い1
むせかえるような血の匂いが辺りに漂う。
視界には血が広がり人だったものがそこらに転がっている。
「ねぇ、」
この場には己以外の人はいないはずだ。
たった今己が全てを消したのだから。
しかし今確かに背後から自分にかける声があった。
「・・・・っ。うしし。なんだぁ?王子に何か用」
感じない気配に、冷たい声音に、戦慄が背中を駆けるのを感じながらゆっくりと振り返る。
「あんまり好き勝手しないでくれる?ここ、俺のテリトリーなの」
冷たい声音からは何の感情も感じられない。
ただ淡々とした声。
振り向いた先には満月に照らされた美しいあいつがいた。
それは、先日、ヴァリアーのボスによって見せられた日本にいる十代目候補、沢田綱吉。
しかし写真に写っている沢田綱吉とは似ても似つかないのはなぜだ?
弱々しいただの一般人に見えた沢田綱吉ほこんな表情をしないはずだ。
「いくらヴァリアーでも許しはしないよ。次からは気をつけてね」
にっこり。そんな笑顔を浮かべるが瞳は笑っていない。
そしてその笑顔に似合わずボス以上の殺気を放っている。
「くっ・・・」
動けない。
動いてしまえば一瞬にして殺されてしまうような。いや、殺されてしまう。
「くすっ。殺しはしないよ。あんたらにはとても大切な役があるんだから」
心を読まれたようだ。
それより役とは何なのだろうか。
「知らなくていいことだよ。それより、それ、ちゃんと片付けておいてよ。よろしくね」
沢田綱吉はそう言ってここから去って行った。
『残ったのは、血だまりと、元人間の塊と、期待に満ちた己』(十代目はボスだと思っていたけどさぁ、あいつもいじゃん)
(綺麗だし、心が強いし)
(そして何より戦ってみたい)
(あいつの強さに、惚れたかも。うしししし・・・)
-*Fin*-
081108
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