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繋ぎ、繋ぐ物語
53



 「何用でございましょう、主様」


 時砂とその家臣達が驚いているなか、政宗はそれに気遣うことなく降り立った桜姫の方を向き、用件を言った。


 「城のやつらにこの事を伝えておけ。・・・それと、」


 一段と低く、小さくなった声音。しかしそれに反して瞳は優しそうに細めた。


 「城を守れ、と」


 その言葉を誰に向けたか、普通はわからないだろう。ただ城の家臣たちだと漠然に思うだけで誰かだとは考えもしない。しかしその言葉が誰に向かって言ったのか桜姫はすぐにわかった。おそらく隣に控えている小十郎にも聞こえていたならばわかったことだろう。


 「御意に」


 下げた頭(こうべ)をさらに低くし了承の意を唱えると、現れた時と同様に一瞬にして消え去った。


 「随分と優秀な部下ですな。・・・しかしあの忍びは目が見えないのでしょうか?」


 時砂の問いに政宗の無表情な顔がピクリと動いた。


 「お前ぇに関係ねぇだろ」


 すうっと細められた瞳に低音の声音。それを一人で受けた時砂はびくりと体を震わせた。


 「もっ申し訳ありません」


 たらりと背を流れる冷や汗に時砂は恐れおののいた。ただの眼力だけで人にここまで恐怖を感じさせるのかと。


 「・・・話は戻して農民の件だが、」


政宗によって話はもとに戻され、再び進められた。




090618 執筆
090622 更新 哀


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