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繋ぎ、繋ぐ物語
51



 彼女は屋根裏にて待機していた。眼下は彼女の主と、ここの館の主が対面をしている広間。


 眼下の話に耳を傾けながら辺りを見回す。


 ここに忍び込んだとき確認したがこの館の屋根裏には忍びはいない。


 普通ならばどの城も、館も、屋根裏には忍びが必ずいる。主の呼び掛けに素早く対応し、反応するためだ。表には女中が待機し、裏では忍びが待機しているのだ。


 この状況に桜姫は眉を寄せた。


 「(我が伊達軍には忍びなど要らないという意味か、それとも・・・)」


 後者の意見の方があってるだろう。忍びを雇うほどの力がないのだ、この一族には。


 屋根裏に潜んでいるのは彼女だけで同じくこの度の任務についた狼は外で待機をしている。このまわりで動きがあった場合の見張り役だ。


 「・・・はっはい。ここより南に・・・」


 話始めた詳しい話に回りの警戒をしながらも意識を向けた。


 時砂の話はこうだった。


 曰く、


 ここより南に位置する村では年貢を段々と払わなくなりついには全く払わなくなった。様子を見に行かせると、農民の手には農具が握られていたが、その表情は凶悪で、農具使い方も畑のためではなかった。報告を聞いた時砂は近くの浪岡に助けを借りようとしたが、丁度政宗から文をもらったから政宗に力添えをしてもらおうと思ったそうだ。文の返事を出せなかったのは農民の一揆に危惧をして忙しく、出せなかった。誠に申し訳なかった。それも政宗様直々にいらっしゃられて全くもって感謝しょうがない。


 状況説明の上に、おそらく政宗がこの館に来たことを利用した内容に桜姫はすぅっと目を細めた。表情には出さないがその変化で桜姫の心情の変化が見てとれた。


 「・・・わかった、助太刀しよう。」


 話を聞いて暫く瞳を閉じて何かを案じていた政宗は瞳を開くと真っ直ぐに時砂を見つめて答えを出した。


 「なんとっ。あぁ、ありがとうございます」


 政宗の返事に嬉しいそうに笑ったが心のなかではニヤリと笑ったことだろう。丸見えな時砂の心情に呆れたように溜め息を吐いた。


 頭を伏せた時砂を見た政宗はチラリと桜姫がいるであろう天井裏を見やった。


 政宗の言いたいことを瞬時に理解した桜姫は一瞬にして政宗の横に降り立った。




090615 執筆
090620 更新 哀


あきゅろす。
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