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繋ぎ、繋ぐ物語


 瀬戸内海の気候により、本州よりも先に桜が咲き始めた。

 その頃、西海の鬼として知られる長曾我部元親が、四国統一を成し遂げた。

 その八日後の城下町で、一人の少女が城に向かって真っ直ぐ進んでいる。

 季節の変わり目を伝える春先の風が吹くと、木々がざわめき、後ろ手に一本で結っ
てある少女の黒髪も微かに揺れた。

「よお、嬢ちゃん」

 目の前に現れた二人の大男に、少女は俄かに顔を顰めた。

 飲み明かしていたのだろう、二人が話しかける度に、酒の臭いが少女の鼻につく。

「さっき、目が合ったよな?んだって言うのによぉー……無視ってのは無いんじゃな
いの?」

 今は朝。陽も完全に登りかけている。

 少女は無視を決め込み、二人の男の間をスタスタと通り抜けようとした。

 しかし、二人は彼女を狙って、いちゃもんを付けたのである。これを、黙って見過
ごすわけが無かった。

「おい、ちょっと待……」

 て。と言おうとして、視界が一転した。

「イダッ!!」

 無様な声を上げ、二人の男はそのまま気絶した。

 大の男を、いとも簡単に引っくり返した少女は、何事も無かったかのように歩を進めようとした。

 しかし、ふと、木々のある方へ顔を上げる。

 視線の先に、一人の少女が居た。


 桜吹雪が、辺り一斉に舞い散る。


 暫く見つめ合うも、互いに興味が失せたらしく、自然と視線が外れた。

 地に居る少女は、太陽の位置を確認すると、再び城へ向かって歩き出した。






090422 更新


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