繋ぎ、繋ぐ物語
50
時は遡り――弟達が兄の許を退去してすぐ。
他に用事のある親益と別れると、親泰は次兄の後を追った。
「兄上、何だってあんな事言ったんだ?」
追いついて早速訊ねる。親貞は弟を一瞥すると、一度も立ち止まらずに歩を進め
た。
「……別に、何だって良いだろう」
「うーん…。あのさ、思うんだけど、何で竜の肩を持つんだ?俺も
竜が居てくれたら、即戦力だし、良いと思うぜ?……でもさ、前は、何かよ
そよそしさを感じたというか…。何で兄上がそこまでするのかが不思議だ」
一応は返ってきた答えに対し、親泰は疑問を思い切って訊ねる事にした。それが功
を奏し、親貞は立ち止まると、親泰の問いに今度はきちんと答えた。
「僕は、兄上が自分の考えを押し通す事自体に、何も不快な気持ちを抱いているわけ
じゃないさ。寧ろ、当主として必要な要素だ。……でも、今回は間違っていると思う
んだ。竜殿に対して、あのように押し付ける事は良くない。更に悪い事に、
自覚なしに感情を芽生えさせていると来たんだぞ。―――でも、もう大丈夫かな。兄
上も、何処か吹っ切れた感じだったしね」
親貞は月を見遣った。
「……結局、お前の問いに答えてしまったな。流石、外交手腕に長けるだけはある。
まんまと乗せられたよ」
苦笑いを浮かべ、自室へと立ち去る。今度は、追わなかった。
090619 更新
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