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繋ぎ、繋ぐ物語
46

「長曾我部……」

「目ぇ覚ましたか……!良かった」

 元親の瞳を見つめ、竜はふいっと顔を背けた。礼を言おうにも、声が出な
かったのだ。

 元親はその様子に苦笑を浮かべた。

「――寝ていろ。こんな時間に起きてちゃあ、身体に障るぜ」

 竜の側に座り、再び寝かせようとするも、彼女は緩慢に首を振ってそれを
拒んだ。

「……なあ、長曾我部」

 あまりの弱々しい声に、元親は軽く目を瞠った。それでも、何事も無かったかのよ
うに応答する。

 竜は、無意識のうちに拳を握った。

「私は、如何してここに居る……?」

「…如何してって、仕合い中に急に倒れたんだよ」

「私は、負けたんだな……」

「………その前の事でなんだがな」

 元親は、竜を抱き寄せた。彼女は、為されるがままに抱き寄せられた。そ
して。

「―――戦に、出てくれねぇか」

 え。と、竜は元親を見遣った。

「いつ戦になるかはわからねぇ……。だが、お前の傷が完治しだい、参加してもらお
うかと思ってる」

 憂いを帯びた瞳を揺らす。元親は抱く腕の力を込めた。

「出て……良いのか………?」

 実態の掴めない何かを掴まえようともがいていただけに、竜にとって、元
親の言葉は衝撃だった。

 これで、生き延びられる。

 嬉しいはずなのに、何処か現実離れしたような雰囲気は一体何なんだろう。今まで
悩みに悩んでいた事が、元親のたった一言で全てを片付けられたからだろうか。それ
とも、これは自分の見る夢なのだろうか。

 夢なら、醒めて欲しくない。

 戦が出来るという事は、これまでになく、嬉しい事なのだから。しかし、本当に何
なんだろうか。この虚無感は。

 本当に、これは夢なのだろうか。現実なのだろうか。

「竜……?」

 心配そうに見つめる元親を見遣る。竜は、わだかまりを抱えながらも微か
に微笑んだ。

「大丈夫だ。勿論、戦には必ず出る……」

「―――ああ」

 元親は、親貞達が言っていたような感情を竜に抱いていたのだのだと気付いた時、
どうしようもなく堪らなくなった。この存在が、愛おしかった。大切だと、出会った
時からそう思っていた。それは今も変わらない。
 何より、失いたくないと思うと同時に、今、腕の中にあるぬくもりを手放したくな
かった。


 その為にも、竜を戦に出す事が最善の策であると信じるしかなかった。



090615 更新


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