[携帯モード] [URL送信]

繋ぎ、繋ぐ物語
44

 竜が目を覚ました時、辺りは真っ暗で、障子から仄かに差し込む月光だけ
が唯一の光源だった。

 竜は、ここは何処なのかと、ゆっくりと起き上がり辺りを見渡した。

 どこか見覚えのある景色に、目を瞬かす。

 刹那、ここは岡豊城なのだとわかった。木材から発せられる雰囲気が、二ヶ月前ま
で寝泊りしていた場所だと教えてくれたのだ。

 竜は目を閉じると、身体全体に鈍い痛みを感じながら、深くため息をつい
た。暫く瞑目したまま、竜は状況判断に勤しんだ。

 自分は何故、ここに居るのか。何故、怪我をしているのか。何故、負けてしまった
のか。何故、戦わなければならなかったのか。何故・・・。

 その答えは、弱かったから。

 弱かったから、己に負け、元親に負け、今、こうしてここに居る。

 そこまで考え、竜は自嘲気味に目を明けた。

 自分は、何をしたかった。たった一つの願いの為なのか。それとも、己を蝕む病か
ら逃げたかったからなのか。

 それらの答えは全てはただ弱いから起きた事だと分かっている筈なのに、何が如何
して、こうも悲しいのか。

 顔を埋める。ただ、今あるこの苦しみから逃れたかった。けれど、始まるのは自問
自答。分かっている筈なのに。

 如何してここに居るのだろう。

 生きたくて、願いを叶えたくて。

 ただそれだけの為だと言える筈なのに。生きる為には戦うしか術がなかったから、
元親と対決をしたというのに。

 何度も、何度も同じような内容の自問自答。

 考えなければ良いのに、考えれば考えるほど、己の弱さに吐き気を覚えた。悲し
かった。身を切るように辛かった。

 わからない。何もかもがわからない。

 以前まで、何も迷う事などなかった筈。辛くても、生きていく為だけに、否、願い
を叶える為に。なのに、如何して今、こうしてこんなにも悩まなければならない。可
笑しい。苦しい。自分は一体今までどうやって生きてきたのかさえ、わからなくなっ
てきている。

 そうして、一体、何十回と同じような内容の問答を繰り返しただろう。

 そんな悩み続ける竜の許に、人の影が降りかかった。何の断りもなく障子
が開かれると、月光を背に元親が立っていた。



090613 更新


あきゅろす。
無料HPエムペ!